新潮文庫<br> 暢気眼鏡

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新潮文庫
暢気眼鏡

  • 著者名:尾崎一雄【著】
  • 価格 ¥385(本体¥350)
  • 新潮社(2016/03発売)
  • ポイント 3pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101049014

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内容説明

疑うことを知らぬ天真爛漫な若い新妻との貧乏暮しを爽やかな筆に綴った名作「暢気眼鏡」。祖父母と父の最期を語る「父祖の地」。胃潰瘍による大出血から辛うじて生還するまでの顛末「こおろぎ」。ほかに「猫」「芳兵衛」「擬態」「玄関風呂」「痩せた雄鶏」「華燭の日」「退職の願い」。生の苦渋と辛酸を、著者の虚飾ない善意と誠実さに巧まずしてにじみ出すユーモアに包んで描いた、ふくよかな心境小説の佳品全10編を収めた。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

107
明るい私小説。読んでいると、笑えて、しみじみとした気持ちになり、おまけに元気が出てくる。貧乏で大変だったこともあると思うのだが、それを乗り越えて楽天的に生きてきた作者の人生に、深く感動した。天真爛漫で、まわりを明るくする力を持った作者の奥さんの力が大きいと思う。2番目の作品「暢気眼鏡」で登場した赤ん坊の長女が成長して、結婚する「華燭の日」を読むと、まるで自分のことのように嬉しかった。私小説は好みではないが、このような作品だったら、いくらでも読みたい。2017/08/13

三柴ゆよし

17
暗くない私小説。若い頃に無茶と不義理を繰り返したひとでも、年を経るごとに人間が丸くなっていくのだなあ、という身も蓋もない感想を持った。よくよく考えてみれば、場面場面では結構悲惨な窮状にあったりするのだが、尾崎一雄のやわらかい語り口がそれを感じさせない。たまにはこういう番茶くさいのを読んで、「ペーソスが~」などと言っていたほうが、きっと幸せになれる。そんなに無理しなくても、まあそのうちどうにかなるよ、と言われているような気がした。2016/05/10

愛敬 史

3
暢気に見える妻だが、実は暢気であったのは私なのかもしれない。すべては無意識にかけていた眼鏡から覗いた光景で、現実は難しいものだ。貧乏に対する負けん気。それにユーモアを交えた、日本を代表する私小説作家の芥川賞作品。2012/02/06

そうたそ

2
★★★☆☆ 作者の代表作を収録した短編集。「暢気眼鏡」は芥川賞受賞作であるが、この頃が作者の作家人生としてピークにあったことは否めない。私小説書きの宿命というべきか。最近の私小説書きというと、西村賢太がいるが、彼のような退廃的なイメージは尾崎一雄の作品にはない。独特のユーモアをもって描かれる作品世界が魅力であるといえよう。しかし、私小説というものは、どうしても時代の波には逆らえないのであろうか。時の流れにより色褪せた印象は多少ながら感じられた。とはいえ、良作なのは確か。入手可能なのは岩波文庫版だけか。2013/04/29

ゾーンディフェンス

0
著者夫婦をモデルとした私小説の短編集。最初の作品ではお腹の中にいた子供が最後の作品では31歳で子供も二人いる設定。夫婦の成長の記録として読める短編集でもある。昔、同じ著者夫婦がモデルの長編を原作にしたドラマを見た。高橋幸治と三浦真弓が夫婦役だった。(古いね) あの時の印象でユーモア小説だと思っていたが、どうだろう? 確かにユーモア溢れる書き方だが、夜の陸軍射的場で赤ん坊をおんぶした妻が夫に「こんな原っぱの真中で…人を殺す気だな」という場面、おかしくもあるけど、ちょっと怖い。描かれている貧乏は本物だね。2017/06/25

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