内容説明
敗戦直後、宗像滋子は子宮癌の手術を受け、女の機能を喪失する。再発を恐れる彼女に、打算で結婚した夫と、学業も投げやりにして歌舞伎役者になろうとする娘との、神経を磨り減らす生活が重くのしかかる。そんな日々の中、彼女は昔の恋人との交際に慰められ、小説を書くことに情熱を燃やすが……。一人の女性の理性と情念の相剋。『朱を奪うもの』『傷ある翼』に続く三部作の終局。
感想・レビュー
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格
1
癌に侵され、子宮を全摘出した滋子が肉体としての女の死を実感するのに呼応するように、娘の美子が容赦なく滋子に襲いかかる。夫の宗像は女を失った妻に情を失ったか娘に芽生えた女に恐れをなしたか、第三部ではろくに表舞台に立たない。家の中には女の血の争いが吹き荒れている。かつての恋人柿沼によってもたらされた滋子の精神としての女の再生がその地獄にひとまずの終止符を撃つが、癌によって柿沼はこの世を去り、滋子は再び傷だらけの肉体を抱えて生きていかなければならない。その滋子を支えるのは柿沼に彩られた精神の虹である→2024/07/19
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