内容説明
難船し、ひとり無人島に流れついた船乗りロビンソン・クルーソーは、絶望と不安に負けず、新しい生活をはじめる。木材をあつめて小屋を建て、鳥や獣を捕って食糧とし、忠僕フライデーを得て、困難を乗りきってゆく。社会から不意に切り離された人間が、孤独と闘いながら、神の摂理を信じ、堅実な努力をつづけてゆく姿を、リアリスティックに描いたデフォーの冒険小説である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
催涙雨
51
漂流、遭難ものの代名詞みたいな作品。時間の経過がやたらと早く、あれよあれよと十年、二十年経っていることに驚く。児童書のイメージもあるが、この時代の作品らしく宗教臭く、命の扱いが軽く、奴隷が出てきて、血なまぐさい戦闘が頻発するため、子供に読ませたいとはあまり思えない。内容に関しては今さらこれを読んであれこれ思うようなこともほとんどなく、個人的にはあくまで古典作品としての価値にとどまる位置付けの作品である。2019/10/05
norstrilia
34
前に読んだのは中学の時(多分)。記憶の中では、無人島でいかに生き延びるか、そのサバイバルの面(秘密基地っぽい!)が強く印象に残っていたけれど、改めて読んでみて、これは「信仰」の物語だ、と認識を新たに。普段は全く気にしていなくとも困難に直面した時に、という神頼みから始まり、深い精神的・宗教的考察に入っていく。18世紀にイギリス人の手によって書かれたこと、更にそれが現代に至っても未だに訴えかけるものがあることに感嘆。2016/06/29
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
26
大人になって再読した。無人島、フライデー、人喰い土人、パンを焼く、などのイメージしか無かったが、再読したら主人公ロビンソンの細やかな自己分析、食人とキリスト教の元での殺人となんら違いがないとか、財産(持ち物)の細々とした分類とか、その財産に奴隷何人とかの記述もあり、時代背景、宗教観が詳しくとてもお子様向け小説ではなかった。犬猫もロビンソンと孤島で暮らすが、増えすぎたら撃って減らすなど、愛猫家の方々が読んだら卒倒しそうなところもある。幸せとは何かといつもロビンソンが考え続けるのも面白い。2016/05/10
ジョニジョニ
13
子供向けの冒険譚だと思い込んでたけど、ぜーんぜん違いました。家があっても電気、ガス、水道のどれかが止まっただけでも不便だとブーブーいう僕にとって、身体ひとつで無人島に打ちあげられるなんて、生きていけると思えない。クルーソーもメソメソと泣いたりするけど、野獣怖さに柵を巡らせたり、鳥やヤギを撃っては肉を食べ、皮を剥いで着物にする。誰にも会わないことで哲学的になっていく様子が、今年の異常な一年と重なり合って、引き込まれました。クルーソーは28年目に脱出したけど、それもまた人生。選ぶことなんて、できないんだな。2020/12/06
Kajitt22
13
内省と悔恨を湛えた文章で語られる二十数年間のロビンソンクルーソーの漂流記。場所は今のべネズエラのはるか沖、カリブ海と大西洋の境あたりだろうか。難破した船の豊富な物資に助けられるが、そのなかでも聖書が一番の糧となってゆく。子供のころ読んでいるはずだが、ここまで深く面白い物語だったとは。最近評判の『火星の人』も宇宙での同じような漂流記だが、そちらはひたすら前向きで明るく、屈託がない。どちらも、突然の危機に対する、冷静な状況判断で生き延びてゆくのだが・・・。2015/11/07