内容説明
その否定的対話によって、既存の社会体制、道徳、宗教を盲信する保守的な人々から糾弾され、不当な死刑に処せられたソークラテースが、法廷で自己の所信を力強く表明する『ソークラテースの弁明』、脱獄のすすめを退け、国法を守って平常心のまま死を迎える彼が、法と正義について弟子と対話する『クリトーン』、毒薬をあおって刑死する彼の最期を語る『パイドーン』を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
52
遠い昔何度か読んだっけ。「パイドーン」は、ロヴェッリによれば、「地球が球体であることを最初に提唱した論文。」
南北
23
ソクラテスの裁判の様子を対話篇の形で書いてある「ソークラテースの弁明」ほか2篇です。この世には命以上に大切なものがあるというソクラテスの主張が述べられていますが、ペロポネソス戦争の後でアテーナイの民主制がグダグダな状態で行われた裁判だということを考えるとひどい裁判だったいうことが容易に想像できます。一方「クリトーン」は脱獄を勧めるクリトーンを説得するソクラテスの見解が述べられています。ここでは死を全うすることが正しい生き方であるとしています。訳も読みやすいと思いますので、一読をお勧めします。2018/12/08
34
22
ソクラテス死す。『ソークラテースの弁明』と『クリトーン』ではソクラテスの死そのものは描かれていないが、それよりいくぶん時期のくだる『パイドーン』では詳細に、かつ感動的に描き出されている。ファンサだろうか。三つ並べてみると『パイドーン』はプラトンみが強く、前二者はソクラテスみ。ソクラテスの死からプラトンがそれを書き残すまでのあいだに何か哲学のごときものが生起したらしい。ソクラテスの最期の言葉にはニーチェの有名な解釈があるが、ニーチェはといえば、強いられたオプティミズムという近代の病にすでに侵されていた。2019/05/18
fseigojp
21
パイドーンが一番難しい いわゆるイデア論の始まり2019/06/24
赤い熊熊
15
営業妨害だとソフィストのやっかみで裁判にかけられたソクラテス。裁判の場での『弁明』。裁判で死刑を宣告されたソクラテスを逃がそうとやって来たクリトンに、そんな不正は出来ないと語る対話、『クリトーン』。死刑執行の直前に集まった弟子たちに魂の不滅などなどを語る『パイドーン』。思想の源流であるが故に、あんまり哲学の不思議な専門用語に撹乱されずに読めた。魂の不滅の『証明』は納得出来るものではないけれど、現代の雄弁に語る人々もこうだよなと思わされる。雄弁に語る人々に対してソクラテスは聖人である点は大きな違いだけど。2017/12/09