内容説明
没後17年を過ぎてもなお、多くの読者を魅了し続ける須賀敦子氏の文学。類まれな知性のうつくしさともいうべきその魅力を読み解く。江國香織、松家仁之、湯川豊の三氏の対談、講演、評論を収録。1)須賀敦子の魅力(江國香織×湯川豊):「須賀敦子さんのエッセイはすべて<物語>になってしまう」と語る江國香織と『須賀敦子を読む』で読売文学賞を受賞した湯川豊の興味津々の対談。 2)須賀敦子を読み直す(湯川豊):起伏の多い人生から生まれた洗練された文章と堅牢な文学を読み解き、その物語性を分析する。 3)須賀敦子の手紙(松家仁之):新たに発見された、親友へ宛てた何通もの手紙を紹介。 4)須賀敦子が見ていたもの(松家仁之×湯川豊) 5)「新しい須賀敦子」五つの素描(湯川豊):父と娘、戦時下の青春、留学、イタリアでの新婚生活、信仰、読書体験、文体など多角的分析。他、略年譜も収録。
目次
須賀敦子の魅力(江國香織+湯川 豊)
須賀敦子を読み直す(湯川 豊)
須賀敦子の手紙(松家仁之)
須賀敦子が見ていたもの(湯川 豊+松家仁之)
「新しい須賀敦子」五つの素描(湯川 豊) 父ゆずり・本を読む少女・「貧」を描く・信仰と文学・「読むように」書く
あとがき
須賀敦子 略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mizuki
50
須賀敦子さんに惹かれている自分♡わたしを魅了する彼女について、江國香織さんと松家仁之さん、湯川豊さんが熱く語っている。須賀さんの魅力は文体とエッセイの中に物語を導入したところにあるとおっしゃっている。この本で須賀さんのやんちゃで情熱的なところを知り、また彼女のことを好きな人が沢山いること、年々増えていることが分かり嬉しくなった!まだまだ未読のエッセイがあり、それらを読み味わうことで須賀さんへの思いも強くなるであろう自分を想像するだけで楽しい気持ちになってくる♡風邪引きの中での読書、効き目ありそうです♩2016/05/28
kiisuke
43
これほどまでに支持を受け絶賛されている須賀敦子さん。彼女の文章の魅力は文体(スタイル)にあるのだという。私たちは文章を読むときに「中身、内容」を一番に重視しがちだけれども本来最も重要なのは文章が美しく、人を打つかどうかであると湯川豊さんは仰っている。須賀さんの文章はまさにそれでエッセイを書いてもひとつの小説のような味わいを読む人に感じさせるのだそう。お恥ずかしいことに須賀敦子さんの文章にはほとんど触れたことがないのですが、魔法の手のような須賀さんにかかった文章たちを是非読んでみたくなりました。2016/02/07
まさむ♪ね
41
その静かでしっとりとした文章からは想像できない、素顔の須賀敦子は情熱的でとてもアクティブな女性だった。野山をかけ回り、小さな生き物たちとたわむれるお転婆な少女は、文学をこよなく愛するまるで鴎外のような父と対立し、悲しみをふりきるようにして社会運動に熱を持って取り組む。そして、日本の一般道を八十キロ!で走行しようとする暴走族敦子。新しい須賀敦子に出会う。はずむような文章で綴られた書簡で見せる、よそ行きでない無防備な須賀敦子も印象的。ついに書かれることのなかった小説「アルザスの曲りくねった道」、読みたかった。2016/02/13
メタボン
34
☆☆☆☆ 須賀敦子についての理解が深まる良書。須賀敦子を読むと「懐かしい感じがする」、エッセイではあるがおのずとそこに「物語性」が立ち現れる、という点に共感。コーン夫妻への数多くの手紙にも興をそそられた。須賀敦子の書を相応に読んできたが、その文章の美しさの本質に改めて思いをいたす読書だった。2021/02/19
ぐっちー
32
2014年の神奈川近代文学館で開催された須賀敦子の展覧会の講演を中心に、須賀敦子の魅力に近づく一冊。語り手•書き手が須賀さんのことを、子供の頃から大好きな親戚のおばさんの思い出話をしているよう。須賀敦子さんには柔らかい思慕のような尊敬を抱いていますが、その割にエッセイしか読んだことがなかったことを恥ずかしく思った。『ある家族の会話』『マンゾーニ家の人々』を読まなくては。2016/04/07