内容説明
新米新聞記者の英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしい、という依頼だった。呪いの解明のため紺が訪れた、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館で、うららという名の美しくも不思議な少女は、そっと囁いた――。「うちに開けぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱も、ありませぬ」謎と秘密と、語れぬ大切な思いが詰まった箱は、今、開かれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
*すずらん*
102
私も確かに箱を持っている。不安が募ればその中に閉じ籠り、不自由を感じたら開ければ良い。外界と隔たる事は私を退屈させるけど、安全を与えてくれる。たまにコンコンとノックの音がする。友達だろうか?殺人鬼だろうか?そう何でもかんでも開けて、真実を知る必要はない。それは私を喜ばせるかもしれないし、悲しませるかもしれない。ただ大事な事は、私に開けるという選択肢も開けないという選択肢もあるという事だ。誰かに命じられる事もなく、私の意思で決められる。箱の中は不自由でありながら、何処よりも自由が尊重されているのかもしれない2016/03/29
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
72
家を捨て、土地を捨て、女を捨て、女であることを隠し大手新聞社の記者となった紺。過去の辛い経験もあいまってか、女として女を生きることを諦め社会進出を目指し、大正という大きく時代が変わる時をもがく少女は、箱のような屋敷で、そこから出ることを否としない女と出会う。数々の女の真実を知り、傷付きもがく様が描かれた一作。作者の作品はデビュー作二作を読んだきりだったが文章はより研ぎ澄まされ旨に切り込んでくるところがある。怪奇奇譚ではないが其れに似た内容は面白かった。続刊もあるようで楽しみ。2016/03/24
まりも
69
新米記者の英田紺と神楽坂にある箱屋敷にと呼ばれる館に住む不思議な美少女・うらら、二人の少女が出会うことで始まる大正時代を舞台にした物語。帯には大正ロマンミステリーと書いてあるけど、いざページを捲ってみると予想以上に重ための話ばかりで少し驚きました。まだ女の自由が無い男尊女卑の考えが主流である社会の中で、時代に流されまいともがきながらも必死に抵抗する少女達の姿は、読んでいて胸に突き刺さるものがあります。重苦しい世界の中で、少女達の強さが光となって輝く良作でした。次巻は出たら読もうかな。2016/03/21
ゆかーん
67
「箱入り娘」という言葉はありますが、ここに登場する娘は、箱のような真四角の建物に居座り続ける正真正銘の「箱娘」。箱の呪いを説いて欲しいという依頼を受けた新聞記者の紺は、彼女に謎解きの協力を求めます。女性の社会進出が認められない大正時代。女の尊厳が無いことに疑問を感じる紺は、新たな時代の転換を求めて取材に明け暮れます。世界は変わり、時代は開けるのと同時に「閉じられた箱を開ける」ことができたなら、新たな時代の流れが訪れることでしょう。この大正シリーズは続くようです。紺と箱娘うららコンビの続編が楽しみです!2016/07/23
ばう
66
★★新米記者、英田紺の元に届いた「呪いの箱」を始末して欲しいという依頼。困った紺は箱娘と呼ばれる娘、回向院うららの協力を願いに行くが…。箱に入っているのは謎と秘密。だから無闇に開けない方が良い場合もあるという。舞台は大正時代、この時代はまだ女性は「家」という箱に閉じ込められて、箱の外に自由に出ることが出来なかった。そして明治や昭和の時代と違う、何か妖しげな雰囲気のせいか横溝正史の作品を読んでいるような感じだった。うららの正体が気になるところなので次回作も読んじゃうかなぁ?2016/03/28