内容説明
丹那トンネルは大正7(1918)年に着工されたが、完成までになんと16年もの歳月を要した。けわしい断層地帯を横切るために、土塊の崩落、凄まじい湧水などこに阻まれ多くの人命を失い、環境を著しく損うという当初の予定をはるかに上まわる難工事となった。人間と土や水との熱く長い闘いを描いた力作長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
118
東海道線の熱海と三島を結ぶ丹那トンネル。大量の湧水や崩落事故もあり非常な難工事となる。大量の湧水はトンネル上部の丹那地域の人々に多大な水不足ももたらす。対策と補償に走る鉄道省や静岡県庁の役人達。あまりの難工事に果たしてこのトンネルは完成するのかと思いつつ読む。本坑が難所にぶつかると、副坑を掘り逆側から難所を掘る。莫大な湧水に多くの排水坑を作る。先人達の技術と知恵の結晶として様々な難工事が終わることを改めて知る。自然の力の前に人間は弱い。しかし、叡智を結集して何とか立ち向かう人々の様子は感動を与える。力作。2022/01/10
KAZOO
116
吉村さんのドキュメンタリーノベルで丹奈トンネルを開通させた人々の記録をうまく小説にして当時の大変な状況を再現してくれています。東海道はこのトンネルができるまでは御殿場線経由でかなり時間がかかったということです。16年間もかかり、犠牲者もかなり出て、出てきた水の量も中途半端ではない量であったようです。「高熱隧道」を思い出しました。リニア新幹線でも水の問題が出てきていますが、きちんと対応することが重要だと感じました。2025/03/03
じいじ
110
昨夜、読み終えた。あまりに凄すぎて、すぐには感想が書けなかった。これは約100年前に成し遂げられた、とてつもない鉄道工事「丹那山トンネル」の完成までを綴ったの実話である。当初の計画では海外からも最新の掘削技術も導入して、工期7年を予定して着工。つぎつぎに押し寄せる難題で工事は難航に難航を重ねた。壁面の崩落事故、爆破による粉塵・硝煙、予想を超える出水量…。そして67名もの工夫らの尊い人命も奪われた。予定をはるかに超える、16年も要した難工事だった。1934年、海岸線を走る生まれ変わった東海道線が開通した。2021/10/16
読特
77
東京から新大阪への2時間半の旅。首都圏には三島から通う人もいる。そのとき潜る隧道がある…両端から掘り始めて行き会うのに16年。それぞれの堀口での崩落事故。奪われた坑夫の尊い命。作業を妨げる湧水の一方、上部の町での水枯れ。陳情から抗議に変わる。一触即発を避け、何とか得られた補償。…世紀の難工事、丹那トンネル。67名の殉職者。二度と戻らない水田とわさび田。多大な犠牲を払って得た教訓。地質調査や掘削技術の発展。反対を押し切っても成せば成るの成功体験。…リニア、万博、原子力発電。変な風には活かされて欲しくない。2023/12/27
アッシュ姉
77
登録本1111冊目は吉村昭さん。大正七年に着工し、完成までに十六年もの歳月を要した丹那トンネル。崩落事故、大量の湧水からの渇水被害、天災に幾度となく阻まれ、多くの犠牲を払った世紀の難工事。トンネル貫通までの長きに渡る自然との格闘、多くの人間がいかに犠牲となって完成にいたったか、時代背景を絡めて克明に綴られた力作。五百ページを超える長篇を読み終えて感慨無量。2018/09/18
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