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内容説明
社会主義革命を成し遂げたキューバの英雄カストロ、スペイン人民戦線を打倒し長く独裁体制を敷いたフランコ。一見したところ正反対の両者には密かな、そして強いつながりがあった。強固な反米意識と愛国心、そしてスペイン・ガリシア地方にルーツを持つこの二人に注目してこそ、初めてキューバ革命以降のアメリカ・キューバ・スペイン間の複雑な外交関係が読み解けるのだ。未開拓の外交史料を駆使して、冷戦下の国際政治の舞台裏を明かし、危機を回避した二人の実像に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
18
冷戦期、米国はソ連に対する地政学的重要性から、スペインに基地を設置し、スペインを国際的孤立から救った。しかしスペインはそうした米国に対し、無謀にも独自外交を展開した。その最たるものがキューバ政策だった。米国がキューバと国交を維持しないよう圧力をかけてきたにもかかわらず、フランコ・スペインはカストロ・キューバと外交関係を維持し続けた。なぜか。理由はカストロとフランコの秘められた四つの関係性にある。一つ目は故郷としてのガリシア、二つ目はスペイン内戦とゲリラ戦、三つ目は反米主義と愛国心、四つ目はカトリック、だ。2016/07/26
skunk_c
15
元外交官の著者が、片や「共産主義」国家のカリスマ的リーダー、片やファシズムと手を結んだ独裁者という、一見対極にあるような両政権が、冷戦時代に国交を維持してきたのはなぜかという疑問から、この両者のつながりを、ガリシア、カトリック、対アメリカなどの視点から丹念に資料を掘り起こして明らかにしようとした好書。両者とも国内的には言論の自由を認めていないが、モラルを重視し、長期的展望から大義ある政治を行ったと説く。そして単純な二分法から外交を考える危うさや、第三国を位置づけることによって見える関係など、示唆に富む。2016/05/07
浅香山三郎
12
フィデル・カストロが亡くなる前から読んでゐたのだが、期せずしてタイムリーな読書になつた。これまで、キューバからみた米国、あるいは反フランコ派からみたスペイン内戦といふやうな本はあつたが、フランコのスペインとカストロのキューバの冷戦期の関係の機微を描いた本書のやうな視点は新しい。ガリシア人気質、カトリック(バチカン)、亡命スペイン人、地中海の要としてのスペイン。色々な補助線を引いてみることで、イデオロギーの全く違ふ両者の興味深い連帯感の実相が見へてくる。ラウルのキューバは今後だうなるのだらう。2016/11/30
シンショ
8
冷戦とかイデオロギーとか対立軸をはっきりさせた方がイメージを膨らませやすいので、どうしても思考が偏りがちになりやすい。本書を読んでこの両者(または両国)の関係を見ているとそんなに単純な区別だけで国家を運営できるものではないということを知らされた。 個人的にフランコ政権時代のスペインに関しては殆ど無知で、「フランコ独裁政権」というステレオタイプのイメージだけだったものを覆された。ただ、まだ全体像を把握できるほどの知識がないためもう少し勉強しなおしてから再読をしてみたい。2022/01/22
スプリント
8
欧州最期の独裁者フランコとキューバの英雄カストロのつながりから冷戦下の外交を論じた内容になっています。両者のエピソードが交互に紹介されていますが、微妙に時系列がズレていることもあって混乱しました。2016/07/02