内容説明
「頼む、三年間だけお前の人生を私にくれ」――昭和10年、村長である父に懇願され、24歳で故郷の無医村の医師となった志田周子。しかし女性や近代医療に対する偏見は根強く、村人からは拒絶されてしまう。雪深き冬、襲いくる戦火、そして東京にいる想い人との恋――過酷な運命にも負けず、僻地医療の先駆けとなった実在の女医を描いた、涙と感動の長編小説。映画「いしゃ先生」の原作本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(*'ω' *)@k_s
48
Kindle Unlimited～山形県大井沢村で「いしゃ先生」と村人に慕われた一人の女医の物語。『頼む、三年間だけお前の人生を私にくれ･･･』父に懇願され周子は24歳で、無医村であった村の診療所の医者となる。昭和10年、よそ者を受け入れない閉塞された社会。村人からの侮蔑、何より大きい障害は貧困と医療に対する無知。命との出会いと別れを繰り返し、誰もが平等に医療を受けられる日を夢見て、日々奮闘する。いつしか彼女は、この村になくてはならない存在となる。-志田周子-最期まで自分の生き方を貫いた女性です。2020/12/11
dr2006
37
昭和十年代、実家のある月山の麓無医村の大井沢で、医療に人生を捧げた一人の女性の物語。当時は女医自体珍しく、死は全て天命であり、医者はおろか西洋医学は全く信用されていかった。その為、東京で医学を学び若くして赴任した周子は、志高くも村人に受け入れらない。その上健保制度もなく、貧しさで患者から診療報酬も得られない。過酷な環境に加え、東京に残した恋人との別離、周子は何度も自分の運命を呪うが、やがて、自分が失ったものは沢山あるが、目の前には命の仕事があり守るべき人がいる、それだけで幸せであると気付く。実話の力強さ。2017/01/13
速読おやじ
33
昭和初期、医者が不在の僻地の村に３年だけの約束だった筈なのに、村長である父の頼みを断れずに結局一生を村の医療に捧げた志田周子の人生を描いた物語。周子をそこまでにさせた意思の力とは何だったんだろうか。田舎の村でまだ医者が忌み嫌われていた時代である。充分な医療設備も器具も薬もなく、人々の栄養状態や衛生も良くなかっただろう。その中で周子の負担は如何ばかりだったであろう。あの時代に志田周子という医者がいた事を知ることができて良かった。映画化もされているようで、見てみたい。2021/10/14
ミュポトワ@猫mode
26
図書館本。ダメだよ、この本泣いちゃうじゃんか！最後、声出るくらいまで泣いちゃったじゃんか！ダメなんだよこういう本は！泣いちゃうから！本自体は映画化されてるみたいですね。舞台は山形で昔、6年くらい住んでいたことがあって、愛着があるんですよ。うん、どうでもいい。問題なのは内容と文章。ダメだってば！ただでさえ、酒飲みながら読んでるんだから涙腺が緩いところで、この内容と言葉運びは！号泣するから！実在する人物の小説で、悲しくって嬉しくって泣いちゃう、そんな本です。今、感想書きながら思い出して、ウルウルきちゃってる泣2018/09/17
Totchang
18
日本のチベットと言われた山形県大沢村。その僻地で活動を続けた女医、志田周子の活動を描いた作品。淡々とした描き方。偏屈な地方で住民の健康意識の向上を図り続ける医療活動が主な内容なのだが、気がついたら涙が頬を伝っていた。2019年厚生労働省は、岩手、新潟、青森、福島、埼玉、茨城、秋田、山形、静岡、長野、千葉、岐阜、群馬、三重、山口、宮崎の16県が、人口や診療需要に対して適正な医師数を確保できていない医師少数県となっていることを明らかにしました。研修医の皆さんや、これから医師を志す皆さんに考えてほしい。2020/11/23
