内容説明
遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん――平安時代末に大流行した「今様」を時の帝王・後白河院が編纂した『梁塵秘抄』。目新しく派手な魅力をもつがゆえに今様と呼ばれた歌謡は、貴賎を問わず大流行した。その主な担い手は社会の底辺を生きる女性芸能者であったが、今様の魅力に取りつかれた院は、周囲に眉を顰められながらも、遊女や傀儡女を召しては習い、狂おしいまでの熱中ぶりであったという。本書には、みずみずしく時にユーモラス、また時に悲惨でさえある、『梁塵秘抄』の生き生きとした今様から代表歌を収録。懇切な解説によってその世界が現代によみがえる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
107
平安末期、武士が台頭し、世は乱れた。権力が集中し、平家でなければ人ではない、などといわれた不穏な時代に、貴族の最高峰、後白河院が没頭したという、今様。そこでは神仏への崇敬、自然の観察、名もなき民衆への慈愛、恋慕や遊び心が、奔放に謡われる。時代を覆う息(生き)苦しい閉塞感を、院は白拍子の可憐な舞いで吹き飛ばそうとしたのか。真面目さばかりがもて囃される現代も、悪ふざけの心を失ってはならない。なにせ人間は、戯れをするために生まれてきたのだから。稀代の名プロデューサー後白河法皇の紡いだ、J-POPの底流。2017/08/30
壱萬参仟縁
37
原文→現代語訳→評。巻末に解説、首句索引の構成。仏も昔は人なりき われらも終(つひ)には仏なり 三身仏性(さんじんぶつしやう)具せる身と 知らざりけるこそあはれなれ=仏も昔は人間だった。われらも最後には仏に成れるのだ。仏に成るべき性質を本来備えている身だと知らずに、仏道をなおざりにしているのは悲しいことだよ(084頁)。すべての衆生が仏性を持っていることを歌う(085頁)。他、鵜飼はかわいそうなことだよ。鵜の餌に万劫も長生きをする亀を殺し、また鵜の首を縄でしめては鮎を吐かせて。現世はともかくも過ごせよう。2016/06/17
はちめ
3
一作品毎の解説が丁寧なので読みやすい。それにしても誰か唄える歌としての実証実験をやってくれないかな。高い澄んだ声の女性歌手を使って!2015/01/11
しまそら
0
「あそびをせんとや生まれけむ」で有名な今様を集めた後白河院による梁塵秘抄。植木朝子さんによる編訳でわかりやすく読みやすく楽しい。2023/07/19
本の紙魚
0
「舞え舞え蝸牛」「遊びをせんとや生まれけむ」等、どこかで聞いたことのあるものから、能・狂言にも出てくる三輪明神や市井の人々の生活まで、平安末期の文化を軽やかに謡いあげた今様を原文・解説・社会背景などと共に収録。作者が真面目な人なのか、やや面白みにかけるのが残念だが、なかなか勉強になった。他の方の感想でも書かれているとおり、声に出して、謡い聞かせてこその今様なので当時を再現することは難しくても、ぜひとも耳で聞いてみたい歌が多数。白拍子や傀儡が美しい姿で謡う様子を想像するだけで沸立つエロスにぞくぞくっとする。2021/04/06
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