内容説明
拡張する身体、サイボーグ化する人間、分身ロボット……未来は希望か、絶望か。人間の身体観が更新するとき、はじめて情報化社会は完成するだろう。「人間拡張工学」の最前線で研究する著者が、SF作品に登場する設定やシーンを切り口に、「スーパーヒューマン」の登場を鮮やかに描き出す!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kentaro
34
大学には、主に基礎研究など新しいことを発見するサイエンス(科学)がある一方で、その発見や技術を用いて問題解決を行う応用科学としてのエンジニアリング(工学)がある。エンジニアリングは問題解決空間のサイエンスともいわれるが、こちらはワインというより料理に近い。料理の内容に応じていい食材を見つけてきて、それぞれの独自の調理法で料理をする。つまり、サイエンスで培った技術の蓄積をどう棚卸しして、どのような目的でアウトプットするかが料理人であるエンジニアの腕の見せどころである。 人間の身体を拡張する研究の奥は深い。2020/02/22
スター
31
人間拡張工学をテーマにした本。光学迷彩などSFから気づきを得た研究について書かれている。2024/01/16
UK
28
なるべくわかりやすいようにと言う配慮から、技術の詳細にはあえて触れないという方針だそうだが、そのためもあってタイトルに比して随分軽い読み物だと感じる。現実はまだまだSFには遠く及ばないから、技術の詳細がないとあんまりインパクトがないのである。一方、身体が空間方向だけでなく、時間方向にも幅を持っている等々、人に関する話は非常に興味深く読んだ。個人的にはそういう切り口で書いてあるともっと面白く感じそうだ。2017/10/26
007 kazu
24
著者は物体を周囲から見えなくする「光学迷彩」を開発した「人間拡張光学」の研究者。光学迷彩の写真は冒頭からインパクト大。物理的な道具から始め、遠隔制御やARを筆頭とした技術から外界のインターフェイスとしての制御可能な身体の拡張はどこまで行くか、ポスト身体論を通じて「スーパーヒューマン」を展望する。最近よく耳にする技術の現在地を知る上で有益。この手の話は圧倒的に映像メディアのほうが分かりやすいものだが、ドラえもんの道具や有名SF映画の引用から難しい話を身近に解説してくれている点で新書らしい良書だ。2019/10/01
活字スキー
12
The Ghost in the ShellからMan-Machine Interface……ガチの専門書ではなく、どちらかと言えば普段あまり科学に興味のない人向けかな。実例や思考実験の他、アニメや映画等のSF作品を引き合いに出しながら、科学で見る人間のしくみとその未来像。自分がこれまでに読んできた認識論や身体論にも関係しててなかなか面白かった。技術が発展し、あらゆるモノがフラット化してゆく流れの中で、仮想と現実の境界はますます重なり合い、ゆらぎながらヒトの在り方そのものも変化してゆくのだろう。2016/03/06