岩波新書<br> 雇用身分社会

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岩波新書
雇用身分社会

  • 著者名:森岡孝二
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2016/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315681

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内容説明

労働条件の底が抜けた? 派遣はいつでも切られる身分.パートは賞与なし,昇給なしの低時給で雇い止めされる身分.正社員は時間の鎖に縛られて「奴隷」的に働くか,リストラされて労働市場を漂流する身分――こんな働き方があっていいのか.この三〇年ですっかり様変わりした雇用関係を概観し,雇用身分社会から抜け出す道筋を考える.

目次

目  次

 序章 気がつけば日本は雇用身分社会
   派遣は社員食堂を利用できない?/パートでも過労とストレスが広がる/使い潰されるブラック企業の若者たち/現代日本を雇用身分社会から観察する /全体の構成と各章の概要
 第1章 戦前の雇用身分制
   遠い昔のことではない/ 『職工事情』に見る明治中ごろの雇用関係/ 『女工哀史』に描かれた大正末期の雇用身分制/戦前の日本資本主義と長時間労働/暗黒工場の労働者虐使事件/戦前の工場における過労死・過労自殺
 第2章 派遣で戦前の働き方が復活
   戦前の女工と今日の派遣労働者/派遣労働の多くは単純業務/一九八〇年代半ば以降の雇用の規制緩和と派遣労働/財界の雇用戦略──『新時代の「日本的経営」』/リーマンショック下の派遣切り/雇用関係から見た派遣という働き方/中高年派遣の実態と派遣法「改正」法案
 第3章 パートは差別された雇用の代名詞
   パートタイム労働者の思いを聞く/パートはどのように増えてきたか/日本のパートと世界のパート/日本的性別分業とM字型雇用カーブ/パートはハッピーな働き方か/シングルマザーの貧困/重なり合う性別格差と雇用形態別格差
 第4章 正社員の誕生と消滅
   正社員という雇用身分の成立/ 「男は残業・女はパート」/絞り込まれて追い出される/過労とストレスが強まって/拡大する「限定正社員」/時間の鎖に縛られて/正社員の消滅が語られる時代に
 第5章 雇用身分社会と格差・貧困
   雇用形態が雇用身分になった/戦後の低所得層/非正規労働者比率の上昇と低所得層の増加/現代日本のワーキングプア/潤う大企業と株主・役員/労働所得の低下に関するいくつかの資料
 第6章 政府は貧困の改善を怠った
   政府は雇用の身分化を進めた/雇用が身分化して所得分布が階層化/男性の雇用身分別所得格差と結婚/高い貧困率は政府の責任/公務員の定員削減と給与削減/官製ワーキングプア/生活保護基準の切り下げ
 終章 まともな働き方の実現に向けて
   急がれる最低賃金の大幅引き上げ/雇用身分社会から抜け出す鍵/ディーセントワーク
   あとがき
   主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kinkin

80
ここ30年くらいで経済界や政府が「雇用形態の多様化」を進めてきた。しかしここで生まれてきたのは「雇用身分社会」という雇用のカースト制度のようなものだ・「あゝ、野麦峠」という映画があった。借金のかたに甘い言葉で女工として売られ過酷な環境の中で働かされるという構図について当時と現在もそう変わらないのではないかと書いている。奨学金返済のために入った会社で厳しいノルマや規則で体調を壊しあげく自殺してしまう。労働基準法改正の動きがある今気になって読んでみた。決して働きすぎなどではなく働かされすぎということに気づく。2017/01/28

どんぐり

70
大多数が正社員・正職員であった時代は終わった。総合職正社員、一般職正社員、限定正社員、嘱託社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣労働者など、労働者の「雇用形態の多様化」が進んでいる。労働法による労働者の保護が弱まってきた現代では、恵まれた雇用身分である正社員もいつ労働市場を漂流する身分におかれるかわかったものではない。著者は、労働者の身分が引き裂かれ、雇用の不安定化が進み、正規と非正規の格差にとどまらず、それぞれの雇用形態が階層化し身分化することによって作り出された現代日本の社会構造を「雇用身分社会」と2016/02/04

佐島楓

47
ネットの言説を資料として使うより、実際にインタビューを行ったほうが良いのではないだろうか。2016/01/11

壱萬参仟縁

45
雇用・就労形態のあいだには雇用の安定性の有無、給与所得の大小、労働関係の優劣、法的保護の強弱、法的保護の強弱、社会的地位の高低において、身分的差別といえる深刻な格差が存在(17頁)。派遣労働は雇用形態の多様化の流れから生まれたからといって、史的経緯からすると派遣を単純な雇用一形態とみなせない(83頁)。説明会では、運転免許証、預金通帳、携帯のみ(89頁)。男性のパート、アルバイトで年収150万円未満は6割(193頁)。男性では、非正規未婚率は正規の1・8倍(197頁)。少子化対策いうなら、ここにメスを。2016/01/05

AICHAN

37
図書館本。この30年の間に日本の雇用環境はがらりと変わった。正社員の終身雇用制は崩れ、正社員は奴隷的に働かせられるかリストラされ、パートは低時給で便利に使われ、派遣はいつ切られるかわからない不安定な立場。公務員でも非正規職員が増えている。日本の非正規社員は全体の4割にも。そして一部大手企業の役員とキャリア官僚のみが甘い汁を吸っている。まるでアメリカのような格差社会になっている。今の日本は本当に深刻な状況に陥っている。多くの若者は将来に希望を持てず家庭を持つ勇気を持てないでいる。こんな国家が繁栄するだろうか2017/03/17

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