内容説明
カエルにされてしまった僕の哀しい愛の物語。曽祖父のうらみでカエルに変身してしまった僕は、やさしい麦子に助けられた。でもグリム童話みたいに素敵な王子様になれるだろうか? 群像新人文学賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
15
ある日、予備校教師に因縁をつけられた「ぼく」は目が覚めるとニホンアマガエルになっていた。カフカ『変身』との間テクスト性は冒頭ですでに断ち切られているこの変身譚は、グリム童話やカエルたちの奇妙な生態、悲しい女の子との優しい恋愛、めくるめく古代文字と謎の粘土版にとり憑かれた男の手記、そんな数々の幻想を軽妙なステップで跳び越えて行く。とにかくカエルになろうがなるまいが基本的にすっとぼけている「ぼく」がたまらなく愛おしく、徐々に緊張感を増していく終盤から物語の結びに至る淀みないドライヴ感は実に鮮やかだった。2011/11/16
eihuji
7
奥付に1990年7月15日第1刷発行とあり、この手の作品が多く版を重ねたとは考え難い(当社比)、また、僕の蔵書の94%くらいが新刊での入手である事を鑑みて四半世紀物の積本と判断する。著者30歳時1983年群像新人文学賞受賞作、とのこと。入手に至った経緯は今となっては不明だが、今回初めて頁を捲り約150頁の中篇作品ではあるがその一貫した語り口の巧妙に大いに感心する。物語は、予備校生の主人公が魔法使いにアマガエルにされた事を発端に繰り広げられる冒険譚。 2017/07/30
押さない
4
9/10 《草かんむり、草で作った冠》 まず文体が良い。 水に果物を浮かばせている時の、あちらこちらに動いたりぷかぷかする音が聞こえてくるかのような揺れ動きや可笑しみがある。フィクションフィクションフィクションと重ね一体どこへ連れて行かれるのかと思わせたところへ、麦子へ再び立ち返り物語が始まる。2023/11/17
多聞
3
何ともいえないコクとまろみを合わせ持つ作品。今後も伊井作品を大切に愛でていきたい。2011/01/05
ホレイシア
3
…良さがよくわからなかったデス。2008/01/08