内容説明
1995年に刊行された著者初のエッセイ集『ミステリオーソ』を再編集したエッセイ集。本巻には、映画とジャズが好きな少年がハードボイルド作家としてデビューするまでの紆余曲折を豊かな感性で表わした「飛ばない紙ヒコーキ」を始めとして、おもに映画・ジャズ・自身に関するエッセイと対談を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
113
遅筆で有名な原氏のエッセイ集。人間として魅力的かと云われればそうとは思わず、生き方がでたらめだと思えば確かにそうだ。傍若無人でもなく不遜でもないが、頑固ではある。世界が止めろと云っても、ずっとタバコは吸うだろう。本当に不器用な男だと思う。しかし音楽と映画と小説を観る目は確かで、その文章は練達の極みだ。彼の生き方自体がジャズなのだ。生き方自体がアドリブとインプロビゼーションに満ちている。こんな男がハードボイルドの第一人者だというのが悔しすぎる。認めたくないが、認めざるを得ない。そんな男だ、原尞という男は。2022/08/14
KAZOO
103
再読です。さまざまなマスコミに発表した文章を、自伝的なもの、映画・ジャズ・読書などの観点から分類したもので非常に楽しめました。年代が同じということと趣味までがほとんど同じなので原さんの書かれていることが非常に心にしみわたるようです。とくにジャズについてはピアノをご自分でやられていたせいもありかなりの入れ込みようです。それにしても次の作品を早く出してもらいたいですね。2017/11/22
セウテス
82
私も社会人になるまで、結構映画館に足を運んだと思う。小学生の頃銭湯に行くのだが、脱衣場の壁一面に映画の宣伝用ポスターが貼ってあった。「風と共にさりぬ」「007シリーズ」からかなりの数観たものだが、「太陽がいっぱい」は格別な想いの作品の一つである。今でも直ぐに、テーマ曲が太陽の光の眩しさを伴い、頭の中に流れてくる。作品を書くまでの話や執筆中の考えなど、たいへん興味深い話であった。言葉の選び方や原氏の所感から、あらためてハードボイルドというスタイルを感じる良い機会になった。ジャズをバックに、映画を観たくなる。2021/10/16
BIN
8
原さんのエッセイ集。若い頃の話を含めた自伝、ジャズピアニスト時代のこと、ジャズや映画のことなど原さんの趣味のことが自由に書かれている印象です。毎日結構細かく日記を書いていたんだろうなあと思います。世間的には可でもなく不可でもない映画「狼は天使の匂い」が大好きらしい。2023/09/05
唯誠
7
原寮という小説家が、物事をどう捉え、どう感じていたかが、これまでに観た映画、美術、聴いてきたレコード、音楽、JAZZ、クラシック音楽の中のモーツァルトの音楽限定、読んだ小説、評論などなどの著者のいう感想文を通し、垣間見ることができる。 物事の表面の下にある…老てみなければ見えてこないものを発見する愉しむにいそしんでいる姿、どう生き、どう老いるかの価値観を持つ生き方に憧れも…する。 2024/01/09