内容説明
自ら歴史小説家と称していたドイルは『最後の事件』をもってホームズ物語を終了しようとした。しかし読者からの強い要望に応え、巧妙なトリックを用いて、滝壺に転落死したはずのホームズを“帰還”させたのである。本編はホームズ物語の第三短編集で、帰還後第一の事件を取上げた「空家の冒険」をはじめ、「六つのナポレオン」「金縁の鼻眼鏡」など、いよいよ円熟した筆で読者を魅了する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
152
★★★★☆ ホームズの短編集の中でも、最も安定感があると思っているのが本作。 ホームズ復活を描いた『空家の冒険』や、ホームズとワトスンが泥棒にチャレンジする『犯人は二人』などのアクション活劇も、その他のオーソドックスな推理物もどちらも楽しい。 好きなのはホームズの思考の流れがキレイな『金縁の鼻眼鏡』か、殺人こそあるものの読後感の良い恋愛ミステリ『アベ農園』だ。2019/04/21
かえで
82
ホームズ短編集その3。10編収録。題の通り、ホームズ帰還します。モリアーティの同胞モラン大佐との対決、6つのナポレオン像を巡る謎、珍しくホームズが冴えない事件、謎の踊る人形の絵…などなど今回もバラエティに富んだ内容。ホームズとワトスン君コンビの仲睦まじさと活躍っぷりは当時の(そして今も)女性読者たちをニヤニヤさせたそうだけど、それも頷ける。この短編集は特に傑作揃い。『空き家の冒険』『6つのナポレオン』が特にお気に入り。ワクワクドキドキが詰まった作品集。ホームズとワトソン君の活躍はまだまだこれからも続く。2017/02/15
Tetchy
82
本書はモリアーティ教授との闘いでライヘンバッハの滝から落ちたホームズがかの有名なエピソードを基に復活する短編集で少年の頃にワクワクして読んだ「踊る人形」も含まれている。しかし「踊る人形」は今読んでみるとポーの「黄金虫」の亜流だとしか読めなかった。ここまでくるとホームズ物も当初の斬新さが薄れ、凡百のミステリと変わらなくなってきているように感じた。「犯人は二人」のように義侠心からホームズとワトスンが窃盗を働くユニークな一編があるものの、やはり全体としては小粒。ネタも途中で解る物も多かった。2009/05/30
びす男
78
あのシャーロック・ホームズが帰ってきた!難事件を解決する鮮やかな手際、「非公式に」プライベートな事件の全容を飲み込む懐の深さ...。彼の活躍劇が再び幕をあけた当時の読者の喜びは、いかほどだったろう。ドイルの手腕にはますます磨きがかかっているようである。「人間が発明したものなら、人間にとけないはずがありません」。頭のなかで、自信に満ちたホームズの声が朗々と響くだけでも、この上なく心地いい。2016/10/29
ブックマスター
60
ホームズシリーズ、三つ目の短編集。ホームズが復活する「空き家の冒険」。ホームズが帰還する感動は海外ドラマ版でも体感したが、やっぱワクワクする。そしてモラン大佐が出てくる回。有名な「踊る人形」は人形のイラストが印象に残る。訳者によれば四か所間違いがあるらしいけど、まず探求する気力が起きない。「犯人は二人」、捜査の為に婚約までするとは……。「第二の汚点」の冒頭では、ホームズの晩年が少しだけ窺い知れる。おなじみの解説も興味深い。にしても、結構間違いあるんだね。でも気づかない人の方が多いだろう。私もその一人(笑)2018/01/19