内容説明
ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が呪縛のように付き纏(まと)う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
300
【2017年初読み】心の奥がムズムズしっぱなしの素敵な作品に出会っちゃった。「俺、ちゃんとするから。また、正月、こたつ、一緒に入って、寝たい」最強だな、年下男子!2017/01/03
しんたろー
201
彩瀬さん2冊目。母親と2人暮らしのドラッグストア店長・梨枝の日常が描かれた物語は、正にドラッグストアでバイト中の我が娘と性格設定が似ていて興味津々で読んだ。大学生との恋愛や周囲の人々との日々が綴られ、普遍的題材なのに新鮮に感じる…解説で山本文緒さんが「デビュー時の宇多田ヒカルみたい」と書いていたが、瑞々しい文章は彼女の音楽と通づるものがあり、言い得て妙だと思う。梨枝の不器用な生き方は、時折ハッとする文学的表現+リアルな台詞+血の通った人物たちで描かれていて、素直に惹かれた。他作品も追いかけたくなった🎶2019/01/10
エドワード
196
梨枝は理由あって離婚した母親と二人暮らし。読んでいて思うのは、彼女が「きちんとしている」ことを後ろめたく感じていること。そういうこと、あるね。ドラッグストアで店長を務める彼女はテキパキと聡明だ。その彼女を「牛のようにボーッとしている」と評する母親。人は多面体だとつくづく思う。バファリン女への気遣い、兄夫婦、母親とのさりげない会話が優しい。学生バイト君との恋の行方は不安だらけ。今どきってこんな人多いね。「恥ずかしい」「みっともない」の意味が揺れている。様々な人の思いがみなストンと心に落着く、心地良い読後感。2017/02/23
🐾Yoko Omoto🐾
181
彩瀬作品初読み。母との摩擦を恐れ「みっともないことをするな」という正論に従ううちに、気付けば何一つ自分で決められない人生を歩んできた梨枝。そんな彼女が恋をして独り暮らしを始め、自分がどう生きたいのかを見つめ直していく。自分の全てに自信が持てない梨枝の「はずかしい」という卑屈さ、「かわいそう」と他人に向けるやや傲慢な感情、「ちゃんとする」という母から刷り込まれた生真面目さ。そんな感情の共存がリアルに刺さる。適度な距離感を模索しながら、確実に変化していくそれぞれの関係性が心に染みる、とても素敵な作品だった。2017/03/13
みどどどーーーん(みどり虫)
168
読み友さんのレビューからの再読。以前単行本で読んだ時のレビューがとてもアホっぽくて我ながら呆れたんだけど、今回もちゃんと書けそうにない。ふと頭に浮かんだのは、指と爪の間に紙がスッと入ってしまって、パッと見よくわからないのに、とても痛くて、気になって気になって、泣きたいほどの痛みじゃないのに泣きたくなって、でも今を何とか我慢すれば……というあの感じ。その痛みが愛おしくなる、この本は私にとってそんな話。恥ずかしい、みっともない、ちゃんとしなさい、こんな言葉はこの先もう、自分にも誰かにも言いたくない、言わない。2019/12/16