角川文庫<br> 心ヲナクセ体ヲ残セ

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角川文庫
心ヲナクセ体ヲ残セ

  • 著者名:加藤幸子【著者】
  • 価格 ¥594(本体¥540)
  • KADOKAWA(2016/03発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784043851027

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内容説明

殻を破りなさい。ジーン(遺伝子)の声に導かれ地上に生まれた私。たった1羽の渡り鳥として未知への旅が始まった。2本足(人間)の襲来、餌の調達、熱い恋心、交尾と共食い、卵の心配、そしてジーンとの別れ、即ち死――(「ジーンとともに」)。ほかに「主人公のいない場所」「渡鶴詩」「雀遺文」「アズマヤの情事」。野鳥愛好家として知られる著者が鳥と人間を同位置で観察し、生きものの心と体のありようを鋭敏に、ユーモラスに描き出した新機軸の傑作小説集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

303
タイトルからは想像がつかないのだが、表紙にヒントがあるように、これは「鳥語り」の短篇集。そう。文字通りに鳥が語るという珍しいスタイルだ。冒頭の「火の恋」は私には鳥種が同定できず。解説の梨木香歩さんによればアカショウビンらしい。「アズマヤの情事」のニワシドリはわかったが、「ジーンとともに」は、全く見当もつかなかった。いずれの作品も、鳥の内質からの声を聞かせてくれる。渡りの感覚などの捉え方はまさに真に迫る。これまでに芥川賞作の「夢の壁」しか読んだことがなかったが、本書のスタイルこそがこの作家の本領かと思う。2017/01/22

翔亀

54
鳥テーマの短編集だが、これが尋常ではない。鳥が登場するだけでなく、また鳥に仮託して人間を描く(擬人化)わけでもなく、鳥の立場で鳥の世界が描かれ る。幻の鳥ニジトリの雌が卵の殻を破ってから「渡り」をして繁殖地で雄と交尾をして卵を産み落とすまでの一生「ジーンとともに」や、一生終える間際の老雀の回想「雀遺文」が、鳥の生態や生理や本能(遺伝子=ジーン)に即して鳥視点で徹底して描かれる。自分が鳥になったみたいになる。そして、鳥の目から見た人間社会がいかに卑小なこと!人間が、生き物の一部に過ぎない事を知らしめるのだ。2015/03/02

田氏

8
鳥がその視野にみる世界には名前など存在しない。そんな非言語の情景を、"二本足"のいきものが言語化しようと試みた。その作業は困難だったろう。なにせ、名前という意識のパッケージを逐次解体し、名前が指すそのもののすがたを濾過して、ふたたび言語との釣り合いをとりながら再構築しないといけない。なんにせよ結果この"二本足"が作り上げたのは、華美な比喩で飾り立てられた幻想でも、見たままを画素の連なりに押し込めただけの写真でもなく、奥行きを持ったひとつの世界だと思う。そこには単に論理整合をとったのとは別種の現実感がある。2017/12/19

yamakujira

7
梨木香歩の解説で期待したのに、どの話もあまり心に響かなかった。アカショウビンを擬人化した「火の恋」ではじまる24話の掌編をまとめた「主人公のいない場所」は、「禁じられた朝」「夜の小箱」など好みなものから「森の誘惑」「蝙蝠道中」など退屈なものまで玉石混淆だな。渡るツルと国境守備兵の述懐が交錯する「渡鶴詩」と、ニワシドリらしき鳥が繁殖に懸命な「アズマヤの情事」も擬人化になじめない。老いたスズメが過去を思う「雀遺文」と、伝説のニジドリの生態を創作した「ジーンとともに」は無常感がいいけれど。 (★★☆☆☆)2021/07/24

ハチアカデミー

6
「ジーンとともに」が凄い。幻の鳥ニジドリのジーンが己の生涯を語るのだが、動物が人間の様に語る作品とは様相が異なり、書き手は、長年鳥を観察し、触れ合ってきた経験を基に、鳥の行動を人間の言語で表現しようとする。例えば、ジーンに語りかける内なる「声」を、人間は「本性」という言葉で捉えることもできる。しかしそれを「翻訳」するのではなく、そうであるかのように表現する文体が異質であり、魅力的。こんな作品、読んだことない。鳥たちかた「二本足」と名指される人間に対する、作者自身の冷徹な眼差しを見て取ることもできる。2016/01/07

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