内容説明
ふるさと祭りの最中に突発する、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。秘密結社イルミナティにかぶれる男子寄宿学校生らの、“生け贄”の生徒へのいじめが引き起こす悲劇。何不自由のない暮らしを送る主婦が続けてしまう万引き。麻薬密売容疑で逮捕された孤独な老人が隠す真犯人。――弁護士の「私」は、さまざまな罪のかたちを静かに語り出す。刑事事件専門弁護士の著者が、現実の事件に材を得て描きあげた15の奇妙な物語。世界各国を驚嘆せしめ、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた『犯罪』を凌駕する至高の連作短篇集!/解説=杉江松恋
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
407
『犯罪』以上に"語らぬことで語る"後味勝負の短編集。各編の長さは短編というよりショートショート。事実だけを突き放して記し、何を読み取るかは完全に読者任せなスタンスが、破綻せずに上手く纏められている。『子どもたち』から『雪』あたりまでの、身近に起こり得る不条理の積み重ねみたいな流れが個人的には好き。『精算』『家族』『秘密』のラスト3連発もパンチがきいている。完全に短編向きな作家の印象だが、こういう作調を長編でも維持しているのか、はたまた、違う良さがあるのか、そちらも追ってみたい。2018/04/15
ヴェネツィア
389
シーラッハは4冊目。これまでに短篇集を1冊と長編を2冊読んだ。もちろん長編も圧巻なのだが、それでもあえて言えば、シーラッハが本領を発揮するのはやはり短篇小説においてではないだろうか。本書は作家の第2短篇集だが、わずか230ページほどのところに15もの作品が並んでいる。ほとんど掌編小説と言ってもいいくらいだ。ところが、いかに短くてもそこには世界が結晶しているのだ。『犯罪』が法廷弁護士を主人公としていたのに対して、こちらは主として犯人が主人公だ。そして、ここに描かれるのは、なんともやりきれない事件ばかり。⇒2017/09/03
KAZOO
126
シーラッハの小説は久しぶりです。「犯罪」を読みましたがかなり印象深い感じがしました。この短篇集には15の作品が収められていて後味の悪さが残る作品が多いような気がしました。第三者的な立場でそれぞれの事件を描写している感じです。ただ後を引く気もしました。2018/08/12
sin
102
単に人生に訪れた犯罪の瞬間を描くことに留まらず、犯罪に巻き込まれた人間自身に焦点が当てられて描き出されているように感じた。司法が裁く刑罰と当事者の思い描く罪悪は違うということか…興味深い作品ですが、この短さと読みやすさは物足りない(笑)今更の感ではありますが弁護士は正義ではなく権利を追求する立場なんだね。2016/02/21
巨峰
75
短編集だからか、罪悪のわりに淡々とした描写で、さくっとすぐに読めてしまいます。感情をストレートには出さない描き方なので、ほんとうにこの小説を味合うには、行間を読むのが必要かもしれない。2016/11/13