内容説明
一九三八年、日本大使館の改築のためベルリンに赴任した著者。改築資材を求め奔走し、歴史的建築物を訪ね歩く日々だが、戦火は否応なく迫っていた。建設総監シュペールとの面会、ベルリン芸術週間――歴史の転換点に立ち会ったモダニズム建築の巨匠、若き日の記録。
〈解説〉堀江敏幸
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムカルナス
7
第二次大戦直前のベルリンに日本大使館建設のために駐在となった建築家の日記。戦争が勃発すると破壊され二度と見れないかもしれないという切迫した気持ちでドイツ以外にもフランスやスイス、イタリアにも足を延ばして建築を見て廻り、各国の風土や伝統に由来する建築の違い、日本文化との違いについて東西文化に精通する芸術家らしい考察を加えている。この経験が著者の後の建築に活かされ建築を保存する明治村へと繋がる。後の歴史観や政治的スタンスに左右されない当時の客観的立場で戦争前夜の欧州各国の状況や空気が書かれているのも興味深い。2017/12/04
rinrinkimkim
4
秀逸な一冊。今年一番の当り本。あとがきを息子さん(吉生氏)が書いていて、文体は建築家らしく基礎の上に柱が立ち、そして梁がかけられてゆく。とありまして、実にいい得てるんです。無駄の全くない文章は谷口氏の建築そのままです。「戦争の危機が迫り、私は美の飢餓をとよく感じ」なんて中々書けない言霊。フェノロサが薬師寺で凍れる音楽と表現してるんですけど、このフレーズはフェノロサではなくゲーテのパクリだったことを知り、こ・これは!と偉大なる発見をした気持ちに。だから読書は面白い。ヒトラーを生で見るなど貴重な体験をお持ち。2020/02/23
ロータス
1
堀江敏幸がエッセイで取り上げており、それがとても魅力的に思えたので手に取った本なのだが、本当に穏やかで心地よい文章で、これがナチス政権下のドイツ留学時に書かれたものとはとても思えない平和な情景が描かれていた。文体の力の偉大さを思い知った一冊。2019/07/22
びす子ちゃん
0
文章の素晴らしさよ!思考が深く専門的なのに分かりやすく、詩情に溢れながらもシンプル。感度の高さに驚く。2017/02/23
紙魚
0
文脈に揺蕩う詩情と郷愁。偉大な建築家の、愛惜と精神が馥郁と香り立つような名著。2016/04/03
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