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内容説明
第2次世界大戦末期、追いつめられた日本陸海軍は、爆弾もろとも敵艦船などに体当たりする特別攻撃=「特攻」を将兵に課した。当初は戦果を上げたが、米軍の迎撃態勢が整うと効果は低下。軍は特攻専用の航空機「桜花」、潜水艇「回天」なども投入する。だが大勢は挽回せず、敗戦までの1年弱の間に航空機だけでも4000人が犠牲となった。本書は、日本人特異の「戦法」の起源、実態、戦後の語られ方など、その全貌を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
40
著者は毎日新聞の記者。 公式の戦史と独自の調査とを突き合わせて、特攻が米軍に与えた影響は一時的なものに過ぎなかったこと、立案に携わった参謀は故人の責任を強調し保身に走ったことを淡々と書き起こします。 「権力主義全体主義の国家は一時的に隆盛であろうとも、必ずや最後に敗れることは明白な事実」敗戦は不可避と見通しながら、目前の死を受け入れた特攻隊員・上原良司の遺書にある言葉が心を打ちます。 特攻に用いられた兵器の概要、戦後描かれた映画や漫画のあらすじも紹介。特攻について幅広い知識を得ることができる一冊です。2019/05/06
おさむ
36
鴻上尚史さんの新書で紹介されていたので読了。毎日新聞記者が特攻の全体像をバランスよくまとめており、入門書としては最適。この手の本の問題はどうしても英霊史観か否かの二項対立になってしまう点だが、両者をうまく併せて示した事で成功している。大和を特攻と捉える(正式には準特攻)見方は首肯します。城山三郎さんや宇宙戦艦ヤマト、そして小泉純一郎などを取り上げて戦後の特攻史を考察しているのも興味深い。百田尚樹などのトンデモ本に毒されてしまった人に是非とも読んでもらいたい1冊ですね。2018/11/20
ステビア
27
愚策を繰り返さざるを得なかった悲劇2021/11/01
terve
26
戦果ではなく死ぬことが目的となってしまった特攻。亡くなった人には、大切な人も守るべき人もいたはず。みんな誰かにとって大切な人であり、その大切な人が死ななければならなかった悪夢の時代であったことを忘れてはいけませんね。敵前逃亡して天寿を全うした中将や、「後から自分も行く」と言って天寿を全うした中将なんかもいますが、それも含めて「特攻」であるという筆者のことばに重みを感じました。兎にも角にも、知ることからではないかと思います。2019/07/23
skunk_c
22
戦争の証言を集めることをライフワークする著者が、特攻についてまとめたもの。楠木正成を美化する皇民教育の流れを冒頭で押さえつつ、「湊川」(楠木最期の戦の舞台)が特攻隊指揮官などによりしばしば口にされた事実から、ひとつの歴史をあぶり出そうとしているようだ。特攻による死者は犬死ではなくその若者を尊いとしつつ、特攻を英雄視する見方は「英霊」を人質にして「外道」作戦としての特攻への批判を封じるものと切り捨てる。生き残り、各界で活躍する者を紹介し、特攻で散ったものの命を惜しむ姿勢に著者の立場が凝縮されているようだ。2015/09/02