内容説明
主家が次々滅亡する縁起の悪さから「厄勘兵衛」と嫌われた男・御宿勘兵衛。結城秀康という理想の主の下、野本右近、久世但馬、本多富正、塙団右衛門ら、癖も実力もある朋輩たちと、理想の家造りを目指すが……。英雄に憧れた男たちの戦国最後の戦―大坂の陣。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
123
武田、佐々、北条。武略はあるも仕官した家が次々に滅び、ついた異名が「厄神」。なかなかマイナーな武将である御宿勘兵衛を主人公に戦国の世の後半から豊家の滅亡迄を描く連作短編集。なかなか味わい深く読めました。主人公が御宿勘兵衛という着眼点から歴史好きとしては唸らされますね。名前は知っていても経歴は知らず。本作で詳しくなれました。個人的には、佐々成政と結城秀康が好きなので読み応えあり。冬の立山を越えた佐々成政の「さらさら越え」はまさに超人的。久世但馬など脇を固める人物達も魅力的。追いかけたい作家さんが増えました。2019/04/17
onasu
22
本能寺の変より一月後、武田に仕えていた依田信蕃(ノブシゲ)と御宿(ミシュク)勘兵衛は、徳川方として信州で北条勢と対峙、敵方の真田昌幸を調略して、信蕃は小城に取り付かんとしていたが…。 「謀多きが勝ち」とはいかにもな格言で、この折も真田は勝ち、信蕃は骸となるが、ひとり信州を離れた勘兵衛はそれだけではなしに、越中、武州、越前、大坂に仕え、名のある武将と遇されるも一部からは「厄神」とも。 奮戦するも仕官先が敗退続きでは、そう称されるのも諾なるかな。各話では再会もあったりして、視点もおもしろく読めました。2018/11/04
スー
18
御宿勘兵衛が武田家滅亡から大阪の陣までの間の仕官して仕えた大名や出会った同僚達との話を中心にして戦国時代の終わりを感じられたいい本でした。登場する武将の半分くらい知りませんでしたが皆とても魅力的で、特に佐々成政と依田信蕃と死んだ後に登場した結城秀康が良かった。成政のさらさら越えが秀吉を引きずり出し最後の勝負をするための命懸けの秘策だったという解釈はとても新鮮で成政に惚れました。依田や御宿や久世但馬の事ももっと知りたくなったのですがマイナーすぎてあんまり本が無いのが残念です。2017/06/08
buchipanda3
18
面白くて一気読み。著者初読み。戦国末期から大坂の陣までを舞台にした歴史小説。さほど名が知られていない武士たちの話なのだが、ひと癖ありそうな面々が生き生きと描かれ、物語も絶妙でとても惹き込まれた。話は、豪傑と評判ながらも仕える家が次々と滅亡してしまう御宿勘兵衛を中心に語られる。天正壬午の乱や越中征伐などを通して様々な出会いがあり、やがて大坂の陣というクライマックスへ繋がっていく。くせもの達は、自らの夢を追い、自ら決めた道を貫き通す。その姿は清々しかった。読み易いだけではなく、読ませてくれる作家だと思った。2016/05/17
Yukihiro Nishino
16
デビュー作にも登場した武将、御宿勘兵衛。己の才能を信じやりたいように生きてきたが、「天下一の武士団」を創るという理想に燃えた結城秀康と出会い感化されていく。それ以来、その理想のため戦いやがて死ぬ。勘兵衛や大阪の陣で戦い敗れていった武将たちの死によって泰平の世が訪れた。己が輝き続ける世がなくなったことを知った彼らは死を選ぶしかなかったのだろう。2017/07/25