内容説明
【第18回柴田錬三郎賞受賞作】10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩りでなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
32
柴田錬三郎賞を受賞。短編集であるが、表題作と言ったものはなく、女性を主人公にした物語り。何と言ってもインパクトあるのが「ふらんだーすの犬」で読み進めるのが辛い。児童虐待が主題だが、冷酷な若いカップル、子供の頼るべき存在が近くにない様子など痛々しい。かなりショックで言葉にできない。「ごはん」「ほおずき」は若き女性の心情を描いている様だが全然響いてこなかった。2017/11/14
油すまし
28
どれもよかった。とりわけ『ふらんだーすの犬』『浅茅が宿』『白菜』が心に残る。『浅茅が宿』の、夫を傷害事件で亡くした静子の、帰ってきて一緒に暮らすことになるかもしれない息子に対しての感情「この息子の食事の支度を、また毎日するのだろうか」は、最近たまたま身近で聞いた台詞と同じなのもあって笑ってしまった。2024/08/23
ぷく
24
立ち止まって「いまといつか」を考える、そして、あの頃あの時というような、わざわざセンチメンタリズムをかざすほどでもない過去の「あの辺り」を、ほんの少し呼び戻すきっかけになった短編集だった。主人公の女たちの「」の言葉はついに声にならず、それらを飲み込む術だけを会得しそれが最善だと思い込む女たちが哀れでもあり、賢くもあり。蝶の羽ばたきの様な、ほんの微かな空気の震え。でもそれは私の心を波立たせるのには十分すぎるものだった。『ふらんだーすの犬』『金魚』『白菜』を挙げる。 2020/02/24
阿部義彦
24
橋本治といえば、評論、エッセイ、時評などが本流と認識されている方が多いと思いますが、小説といったら「暗夜」等の尖った意匠のものが多かったのですが、ここの所どこにでも居る市井の人々の何気ない日常をさりげなく書いたように見える(勿論その中には棘や毒は盛り込まれてますが)短編を発表する場を与えられて、小説としては初めてこの本で柴田錬三郎賞を貰いました。かと言ってほのぼのとしたお涙頂戴なんかを期待すると案の定足元を攫われますので覚悟して読んでください。飛躍を飛躍と感じさせない筆致が凄いです。2019/05/02
keith
23
初読みの作家さん。苦しい話がいっぱいの短編集。特に第一話の「ふらんだーすの犬」。苦しくて、哀しくて、腹立たしくて、どうしようもなくて、やりきれなくてたまらない。ラストの一行が本当にたまらない。2015/03/19
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