内容説明
崇拝する中宮定子を慰めるため「枕草子」では美しいことばかり描いた。智識と才気で紫式部と反発し合った清少納言も、いまは山の庵でひとり九十を迎える。自分の定命がわからないのも仏の慈悲。心には華やかな宮中での日々が甦える。九十歳の著者が九十歳の清少納言に乗り憑ってのモノローグ。著者畢生の意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
橘
30
面白かったです。90歳の寂聴さんが、晩年の清少納言を描く。寂聴さんの後書きにあったように、本当に清少納言が乗り移って、つらつらと思い出を語っているような作品でした。何度も何度も描かれるエピソードが、華やかなようであり、寂しくもあり、しみじみとしました。枕草子、きちんと読んでみたいと思いました。2018/01/17
coco夏ko10角
20
とてもよかった。そして時々しんみりと。2017/04/29
じぇりい
16
うらぶれた晩年の清少納言が華やかかりし宮中勤めの思い出に浸りながら、「枕草子」には書けなかった本音を物語ってゆく。90歳を過ぎた瀬戸内寂聴さんならではのもうひとつの「枕草子」2016/09/20
アルピニア
12
枕草子が明るい華やかな事項を描いたものならば、ここに描かれているのは心の底に沈めておいた、忘れ去ることのできない記憶。瀬戸内さんは裏枕草子といえるようなものを目指したのだろうと思った。瀬戸内さんが抱く清少納言のイメージがまるで目の前で語っているような気がする。特に心に残ったのは、父との会話。好き嫌いは別として、あの時代に人並みの容姿で家柄もそれほど良くない女性がたくましく生き抜いていく姿には、拍手を送りたいと思った。それにしても、才女の双璧とも言える清少納言と紫式部が同じ時代に生きたという事実に感動する。2016/01/24
雛子
9
清少納言の綴る平安時代の感性、教科書で読んだ枕草子。たぶんここから私は平安時代や宮中のことに心惹かれるようになったのかもしれない。紫式部や源氏物語は題としてとりあげられやすいのに、清少納言や枕草子はそうでもなく。天国より地獄の方が面白そうだというこの小説の中の清少納言とは気が合いそうで友人にいたら楽しそう。2016/05/24