内容説明
治療こそ医師の使命だ。しかし、治らない患者はどうするのか。
肺がん専門医として確固たる地位を築き上げていた岡部健医師は、病院での治療に限界を感じ、宮城県に緩和ケア医院を設立。末期がん患者の訪問介護に注力し、2000人以上を看取った。
その岡部医師自身に胃がんが見つかったのは、東日本大震災の一年前だった。
自らのがん、震災は、岡部医師の死生観を大きく変えた。医療と宗教の壁を取り払い、「臨床宗教師」の誕生に、死の直前まで取り組んだ。
この本は、丹念な取材で知られるノンフィクション作家が170時間以上かけて、岡部医師の語る死生観、抗がん剤への疑問、在宅死、「お迎え」体験の意義などをまとめた「岡部医師の遺言」である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みちお
6
母の看取りに向けて、これから何が起きどう受け止めればよいのか何も分からない中で読んだ書。まさに死の闇に降りていく道標であり、自分自身の死生観も変えてくれた書だった。 "「お迎え」は、最期の時期を穏やかに過ごすために、神から与えられたギフトなんだと思う。 人間は生理的に、あの世に守られながら死ねるようになっているのかもしれない。" これほど救いになる言葉はないなと思う。2022/04/05
きょ
5
こんなすごいことしてた医師がいたんだ。もういないんだ。死生学には、たいへん興味がある。とはいえ、そんなもん、学問じゃなくて生き方、逝き方を己れでどう扱うべきか だろうとも思う。なんて突き放したら、死を怖れ哀しむ人の手助けなんて出来ない。寄り添いたい、でも自分でしっかりしてほしい。なんて思っていては、対人援助職ではない。私はどのように死に向かうのだろう。岡部先生のバイタリティー溢れる生き方、臨床で見出した緩和ケア、御自分が示した死出の旅だち、圧倒された。あちらへ行ったらお会いしたい人が、また増えた。2016/01/04
じぇい
3
旅先で読了。あえて急がず噛み締めて。まず、自分の望む死を選ぶには圧倒的知識が必要だ。多分これから10年で技術的な面の進化はかなり激しい。そして岡部先生のモデルは看取ってくれる家族がいない、これからの都会の高齢社会では絶望的だ。高い志と強い意志を持つがゆえに、反論を許さず、高みからの発言の面もある。それでもこの選択はなければいけないとも思う。介護と看取りの将来にまだ希望は感じない。医師は熱心であればあるほど、日常を生きてない気がする。生の充実はそこではないのか?2016/02/13
英
2
今じゃないけど、死ぬまでに、宗教や看取りに関わる活動をしてみたいと思った。日本人は無宗教というのには確かに違和感があって、極度の多神教なんじゃないかと思っている。お迎えやあの世への行き方について信じられるストーリーがないと、死への不安感が強い。医療に頼ると、本来なら意識が朦朧としていくのに脳機能が最後まで低下せずに死を迎えるから、最後まで不安と向き合うことになる。宗教がないと、医療以外に出来ることがないから頼りたくなる。残される家族も納得できるような看取りの儀式と在宅介護が実現できる制度が必要。2022/10/28
キオン☆
2
医学は日進月歩。けど、時があるんだよ。抗がんの治療は75歳がボーダーと。社会的影響力がある人はともかく、私なんぞ...nothing。看取り、逝く人を含めどういう文化を持って生きてきたかが、如実にでるときだろう。臨床宗教師。臨床でなくても、宗教は大事だと思う。誰もが通る道だし。いつお迎えがくるんだろう。先に逝った方々には見えているのだろうけど。後始末があるから、ガンで逝きたいな。事故類だけは困るよ。奥野氏すごい取材力だと思う。よい本だった。2018/06/25
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