内容説明
七つの銀河系に悪名高い日系人盗賊ビリイ・アレグロ・ナルセ。仲間は宇宙船の喋る船載コンピューターと、テレパシイで会話する毒蛇だ。彼らを先々で待つのは奇妙な依頼――有翼人の娘には王女に殺された恋人の復讐を、大企業の経営者には愛娘に贈ったアンドロイドの恋人の奪還を、市民全員が仮面の着用を義務づけられた都市の女子大生には市長本人の仮面の強奪を。そして驚愕の結末に至る『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』。五つの国の王に復讐を誓う元王女・真晝(マヒル)は名うての刺客・鹿毛里(カゲリ)を雇い、この世の涯から涯へと旅を続ける。二人の行く手を阻むのは、それぞれに特殊能力を持つ刺客たち。手の込んだ展開で傑作の呼び声も高い活劇長編『暗殺心(アサツシン)』を合冊して贈る。/解説=半村良、矢田省作、日下三蔵
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶうたん
8
連作SFの2冊を合本したもの。個人的には架空世界の刺客を描いた「暗殺心」の方が長編ともなっていて面白かった。「ビリイ・アレグロ」はパートナーになるダイジャがある意味では万能で、必ずしも主人公の力による活躍ではないところがやや不満に感じた。「暗殺心」でも主人公が完全で、およそピンチが無いのは構成的に同じとも言えるのかもしれないが、パートナーのお姫様が弱点になっていて、バランス的には良いように思う。それでも今読んでも古さを感じないのはさすがではある。2022/11/03
はんげつ
4
『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』の覆水が盆に返っていくようなオチが最高ですね……。各篇プロットにミステリ的な捻りが利いていてまずまずのスペースオペラだったと思います。より自分好みだったのが後半の『暗殺心』。五人の王を倒したいねんという元お姫様と、彼女の依頼を受けた刺客の、騙しに満ちたニンジャ対戦道中がすごく楽しいです。次々と襲いかかってくる刺客たちの能力に対して、どのような対策をするか、といった趣向で読ませます。もっと長いスパンで味わいたい物語でしたが、落ち着くところに落ち着いたいい結末だと思います。2019/08/02
てら
4
初・都筑道夫。こんな見事なSF(スペオペ)とファンタジーを書いていたんですね。80年代に50歳を過ぎた、1929年生まれの作家が書いた小説とは思えません。軽いのにうまい。うまいのに軽い。これぞプロ!という文章に嬉しくなってしまいます。さらに巻末の半村良による紹介、編者・日下三蔵の解説、これまた完璧です。2019/03/17
ぞるば
3
かっこいい!って思えるヒーローってなかなかいないんですが、ビリイ・アレグロも鹿毛里もすごくかっこよかったです。若そうだけどオッサンくさいところが。苦笑いが良いですね。ダイジャほしい…。暗殺心は、風太郎先生の雰囲気とちょっと似ていて楽しかった。ぬめってはいなくて、洒脱でどこか枯れた感じが気持ち良い。けど、最後の地獄絵図、映像化するとけっこうシュールだと思う…。実は藤田和日郎さんが暗殺心のことちらっと書いてたのをどっかで読んだので、買ってみた。正解だった!2015/07/05
sezmar
3
七つの銀河に名高い盗賊が様々な事件に巻き込まれる銀河盗賊ビリイ・アレグロ。集英社文庫の後書きに詳しく解説されているのでそちらを参照(半村良先生)。名高い暗殺者鹿毛里が五人の国王の暗殺を依頼され、依頼者の美女と旅するお話。暗殺対象以外にも鹿毛里を殺して名を上げようとする手強いライバルが怖い。彼らの特殊能力をどう交わして暗殺するのか見どころの一つ。両作品ともセミレギュラー的なキャラがいて楽しい。2014/07/31