内容説明
夏目漱石『三四郎』冒頭の名古屋駅、「勝負に打って出る玄関の駅」と言った升田幸三の大阪駅、出征・帰還の軍用列車が発着した品川駅……。明治初年の岩倉使節団で久米邦武が見出したように、「駅」は近代文明の本質を表わす場となった。大衆化・大量化する鉄道とともに変貌していく駅の姿を辿り、鉄道史から近代をとらえ直す。 〈解説〉老川慶喜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
9
日本の近代にとつての鉄道駅とは、といふテーマで、ターミナル駅の歴史、貨物の役割、駅の構造の改良といふ具体例を論じる。客貨分離・軍・戦争・市民社会・郊外の市街地化など、日本の近代社会・体制が整備されたことによる鉄道の対応が、公刊された鉄道史研究書・社史・公文書のみならず、文学作品などをも援用して叙述されてゐる。この鉄道の対応といふことの具体例が駅の高架化や駅の拡張などの技術的な要素を含むが、その辺りを正確に書かうとする著者の堅実なスタイルが滲み出てゐる。2022/07/08
iwasabi47
2
読友さんより。87年刊。JR前までの駅の話。細部は追い切れないが、文学史文化史の話は面白い。昔よく行ったJR元町のデザイン。久しぶりに行こうかな。2022/12/10
shonborism
2
親本は国鉄民営化の頃に書かれたもの。著者が健在であったなら、今の鉄道をどう評価するかなあ。2016/01/10
ともり
0
駅の「公共性」なんかを考えなければならなくなった際に、その歴史性を捉え直す必要があるようだったら再読したい。本書では都市における駅が主に取り上げられていたが、「都市的な駅」と「地方部における駅」の持つ意味は全てが重なるものではないのではないかとふと感じた。それは都市⇔地方の単純な二分法によるものなのかそうではないのか考えてみたい。2022/04/07
Takahide✈Yokohama
0
2008年に亡くなった原田さんの本。宮脇さんが父親と一緒に米坂線の今泉駅で玉音放送を聞いたことは良く書かれているけれど、日豊線の竜ヶ水駅では玉音放送があること自体伝達されていなかったが玉音放送前に降伏の情報が回っていたいうのは面白い。2018/10/22