内容説明
高倉健と菅原文太。日本映画界の二つの巨星が、2014年11月、奇しくも同年同月に世を去った。1960年代以降、任侠映画の代名詞となった健さん、70年代に実録路線を邁進した文太。彼らとともに歩んだ稀代のプロデューサーが、二大スターの素顔と魅力を縦横に語る。あわせて、敏腕プロデューサーならではの企画立案、キャスティング、予算管理、ヒットの狙い方など、あらゆるモノづくりに通底するヒントを一挙披露!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
34
2015年刊。『仁義なき戦い』『極道の妻たち』等のプロデューサーが、高倉健と菅原文太、邦画や東映の来し方について語る。スキャンダルや当時のモラルが生々しく書かれていて面白い。時代劇が衰退して任侠映画が主流になり、高倉健は『網走番外地』など9年で38本も出た。時代はさらにリアルに向かい、菅原文太の『仁義なき戦い』など実録物が人気を得る。しかし陰惨な話は衝撃的だけど飽きられるのも早い。映画産業全体も凋落して行く。本書にはストイックな高倉健と開けっぴろげな菅原文太の他、多数の役者や映画人の話が詰まっている。2021/06/12
スプリント
5
サブタイトルである映画プロデューサーの仕事論が本編です。高倉健と菅原文太の話はそれほど分量は多くありません。日本映画の業界裏話としては面白い内容でした。2016/05/31
まさやん80
3
「健さんと文太」という表題だが、それよりも副題のプロデューサーの仕事論に多くが費やされる。日下部さんの本は、以前に「シネマの極道」を読んでいるが、本作の方がざっくばらんに俳優や監督、脚本家について語っている。なかには、そんなこと言ってもいいのというものもあるが、日下部さんくらいにベテランになると、もう怖いものなしというところもあるのだろう。なかなか語られない裏話が満載で、とても面白い本です。2016/06/24
ソノダケン
3
同じ様な話ばかりやっていた東映だから、差異化が必要で、逆説的に笠原和夫みたいな脚本家が育った。深作欣二は無類の編集好きで、『仁義なき戦い』のスピード感は周到なハサミの入れ方の成果。エロスに定評ある五社英雄は、実は女優の扱いが下手で嫌われていた。岡田茂社長はケチんぼだが、濡れ場があるとくすぐればOKを出した。日本映画、なんてすばらしい世界なんだ。なぜ滅びてしまったんだ。2016/01/22
桑畑みの吉
2
元東映社員プロデューサーによって語られる仕事論。今まで接してきた俳優や監督・脚本家等スタッフについての話が80%、映画のプロデュースとは何ぞや的な部分が20%位の分量である。著者は「アイデアを含めて、すぐに人に取られるから、フットワークが軽くないといけない。」「山っ気が欲しい」と書いている。奇しくも梶芽衣子さんは自ら企画した『鬼龍院花子の生涯』を日下部氏に取(盗)られ、その後も不愉快な対応をされたと告白本で暴露していた。品行方正だけでは映画のプロデューサーは務まらないという具体的なエピソードであろう。2019/09/05