内容説明
日本中世史の諸説に様々な疑問を提出した小論集。「平民の自由」「民衆の生活史」「東国と西国」「百姓」「海民」など、著者が現在も徹底して追究し、多くの成果をあげている、数多くの研究主題の原点が提示されている。常民文化研究所で著者に強い影響を与えた民俗学者、宮本常一に関する論考も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
18
日本中世の自由について/東国と西国/徳政雑考 要再読。2019/05/09
のれん
8
網野史学で最も影響を及ぼした点の一つである庶民の職能についてがメインとなっている。 この80年代に書かれた文章でも、現在の日本社会体制の固定観念を十二分に破壊してくれる。というかまだ日本は白米と島国観念に縛られているとも言えるか。 稲作系の西日本、狩猟系の東日本。東西という地形差は異民族とすら呼べるほどの差があった。 差があれば戦争があり、交易もある。 南北朝の動乱は産業が交易を通して繋がっていたからこそ出来た大規模移動であった。 近代はまさに日本を均一化しコメ以外を黙殺した転換期であることがよく分かる。2021/08/30
sun
7
中世マイブーム。狂言に興味持ちはじめた為。引用が多く初心者には読みにくいが、年貢、漁民、東西での体制の違い等私には新鮮。もう何冊か読まなければならない2014/03/15
うれしの
3
紹介に「小論集」とあり確かにコンパクトですが、中身は多様で濃い。一番好きなのは「日本中世の自由について」。示唆に富む本文もさることながら、同業者からの批判に対する反論がときに3ページ以上にわたって熱く冷静に展開される「注」がなんかメチャ面白かった。「南北朝内乱の社会的意義」は時代のイメージを作るのに好適。2016/02/14
壱萬参仟縁
3
「茶道、立花をはじめ能狂言、住居、庭園の様式、水墨画等々、いわゆる伝統文化の源流は、すべて内乱期から室町時代を出発点としている」(193ページ)とは重要な指摘だと思う。通訳案内士の学習をしていると、こうした文化の淵源は外国人にも知ってほしいと思えるからに他ならない。民俗学は科学的手法と、民俗誌や生活誌の叙述との総合が必要(242ページ)との指摘は大切。科学としての民俗学が暮らしぶりの記録に依存しつつも、常民の肉声を反映させた学問として市民に普及することで現代人の暮らしぶりを反省するためにも必要か。2012/09/21