岩波新書<br> 在宅介護 - 「自分で選ぶ」視点から

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岩波新書
在宅介護 - 「自分で選ぶ」視点から

  • 著者名:結城康博
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2016/01発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315575

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内容説明

介護保険制度スタート時に唱われた「施設介護から在宅介護へ」「行政主導から利用者本位へ」はどこまで実現したのか? 「施設志向」が増している現実は何を語るのか.制度の利用方法から現状の課題,人材不足の背景,財源問題まで.きめ細やかな現地調査に基づき現場を踏まえた政策提言をも行う.このテーマのすべてが分かる基本の一冊.

目次

目  次

 序 章
  1.姑の介護のために離職した嫁
   長い介護生活/認知症と診断/鏡に映る他人/介護離職となる
  2.在宅介護は拡がるのか?
   在宅介護サービス/家族構成の変容
  3.目まぐるしく変わる制度
   複雑化する制度/根強い施設志向/介護士不足の深刻化
  4.本書の構成とねらい
   介護というリスク/在宅と施設は車の両輪/本書の構成/現場からの政策提言
 第1章 在宅介護の実態
  1.在宅介護の困難さ
   独居の要介護高齢者/介護と夜間帯の仕事/老夫婦が看る/施設入所が担保
  2.二四時間型ヘルパーサービスの再構築
   定期巡回・随時対応サービスとは/ヘルパーは来るが?/厳しい経営状況/成功している事例
  3.サービス付高齢者住宅
   施設から住宅へ/施設との違い/入居費用/いつまで生活できるか?/選ぶ能力が問われる
  4.複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
   小規模多機能型居宅介護/馴染みの関係がメリット/看護サービスをプラス/伸びない事業数
  5.厚生労働省の政策ミス
   会計検査院の指摘/普遍的な仕組みに
 第2章 家族介護の限界
  1.介護離職者一〇万人
   五〇代女性が辞めていく!/介護休暇は三か月/予期せぬ介護生活/九三日では足りない/介護休暇の延長を
  2.パラサイトシングル介護者
   家族介護と親の年金/面倒な息子や娘/高齢者虐待の危険
  3.施設は利用しづらい
   待機者問題/地域間格差
  4.グレーゾーンの介護サービス
   お泊り付デイサービスとは/劣悪なサービス/政府の対応/寝たきり専門の住宅型有料老人ホーム
  5.グレービジネスの惨劇
   在宅介護の限界/高齢者の地方移住/静養ホームたまゆらの悲劇/当事者に聞く/難しいケースばかり
 第3章 認知症高齢者の急増
  1.認知症高齢者の徘徊
   徘徊が社会問題に/数年ぶりの再会/認知症の鉄道死裁判/戸惑う家族と現場
  2.急増する認知症高齢者
   認知症高齢者四六二万人以上/金銭管理が難しい/認知症高齢者が加害者に/受診を嫌がる/早期発見と早期治療
  3.家族形態と地域組織の変容
   独居高齢者と老夫婦世帯/消費者被害の視点から/成年後見制度/市民後見人
  4.オレンジプランとは
   認知症施策/地域で見守る期待と限界
 第4章 在宅介護サービスの使い方
  1.介護保険における負担
   上昇する介護保険料/介護にいくらかかる?/ 「加算」という仕組み/介護報酬マイナス改定/障害者福祉との関係/障害者福祉制度とは
  2.在宅介護サービスを受けるには
   要介護認定の仕組み/調査の内容/妥当性・客観性を欠く認定結果/要介護認定制度の簡素化
  3.ケアマネジャーを決める
   ケアマネジャー次第!/退院するにあたって/書類整理に追われる/男性の介護
  4.在宅サービスのあれこれ
   在宅介護ヘルパーに聞く/生活援助サービスの短縮化/デイサービスとデイケア/ショートステイとは/地域住民しか使えないサービス/地域包括支援センターの役割
  5.利用しにくい介護保険サービス
   制約されるサービス/買い物難民/自費によるサービスの活用/ボランティアなどの活用
  6.質の悪いサービス対策
   悪い介護従事者/苦情相談窓口の活用
 第5章 施設と在宅介護
  1.地域包括ケアシステムとは
   五つの要素/自助と互助/ 「互助」は減退
  2.施設あっての在宅介護
   施設と在宅の対立軸は危険/ショートステイの問題/施設と在宅の往復を/一体的経営をめざす/話題となった杉並区の選択
  3.他の施設系サービス
   埋没する施設/有料老人ホーム/施設選びのポイント
  4.東日本大震災からの教訓
   忘れられない東日本大震災/施設が福祉避難所へ/三年半後の被災地の介護現場/被災地以外の在宅介護/ガソリン不足が直撃/電力は要介護者の命綱
 第6章 医療と介護は表裏一体
  1.在宅医療の現状
   介護は突然訪れる/在宅療養支援診療所/ 「地域包括ケア病棟」の誕生/救急搬送されても/療養病床のゆくえ
  2.看護と介護
   深刻な看護師不足/介護士による医療行為/薬剤の飲み忘れ/口腔ケアの意義
  3.老人保健施設とリハビリテーション
   老人保健施設は在宅までの中間施設?/在宅生活への復帰は厳しい/リハビリテーションの意義/住宅改修と福祉用具/介護用レンタルベッド/介護報酬のジレンマ/介護予防の促進/健康寿命と平均寿命
  4.在宅介護と看取り
   人はどこで最期を迎えたいか/看取りと介護の連続性/医療と介護の連携/供給不足は否めない/患者や家族の意識/理想と現実を考える/身寄りがいない人の支援
  5.医療と介護の考え方

 第7章 介護士不足の問題
  1.介護士不足は深刻
   施設は完成しても/介護は雇用の調整弁か?/潜在介護士の存在
  2.介護士という資格
   介護職員初任者研修から介護福祉士まで/無資格でも施設では働ける
  3.介護士養成の難しさ
   魅力のある福祉系学部卒業生/将来を見据えて/失業した求職者の活用
  4.外国人介護士は切り札か
   EPA介護士の養成に携わって/ベトナムの労働市場を垣間見て/在日フィリピン人介護士
  5.介護人材不足に秘策はあるのか?
   六〇歳過ぎてヘルパー資格を取得/若いヘルパーには負けない技術/経営者のマネジメント/男性の高齢者介護士/離職率が低い事業所の共通項/賃金格差
 第8章 介護保険制度が大きく改正された
  1.二度目の大改正
   法改正による影響/マイナス改定の余波/事業継続の難しさ/利用者を拒む
  2.要支援1・2の人はサービス利用が大きく変わる
    「総合事業」の誕生/ 「給付」と「事業」の違い/基準が緩和されたサービス/無駄なサービス利用
  3.「地域で支える」がキーワード
   孤独死の問題/見守り活動/サロン活動
  4.はじめての自己負担二割導入
   高齢者の約二割が該当/高額介護サービス費
  5.保険料の仕組み変更
   所得の再分配/後期高齢者医療制度との関連
  6.特別養護老人ホームの申込みは要介護度3から
   入所申込要件の変更/要介護度1・2で入所できる条件/助成制度(補足給付)の見直し
  7.介護予防が変わる
   一次予防と二次予防/統合された介護予防
 最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか
  1.介護における格差
   多重介護/高齢者間の経済格差/介護保険が使えない/年金支給開始年齢
  2.産業としての介護
   混合介護とは/家政婦サービス/法の隙間を狙う/営利企業について/社会福祉法人の役割/コンサルタント業
  3.これからの政策と財源論の方向性
   社会保険と福祉制度/増え続ける保険料/公費負担の割合を五〇%以上に/資産を把握しての負担増/財政赤字と言いながら/ 「充実」を前提に
  4.あるべき日本の介護システム
   単純な仕組みに変革すべき/医療と介護の概念の違い/平成の大合併を軽視しない/介護福祉士と准看護師の資格統合
  5.介護は社会投資である
   福祉と公共事業の乗数効果/介護士による内需の牽引/ 「負担」でなく「社会投資」
   主な参考文献
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

53
カバーしている範囲が広く、問題意識を持てるだけでなく介護する側にとっても有益な本。政府の政策と現場の乖離、介護保険やサービスの限界といったことを強く感じる。将来の自分の問題として読んでおくのにも良い。2015/11/26

關 貞浩

9
団塊の世代が後期高齢者となる2025年。介護難民を生まないためにも、地域包括ケアシステムの整備が急がれている。“在宅と施設といった二分法的な考え方ではなく車の両輪として据えるべき”という筆者の主張をベースに、財源、労働力不足など、克服しなければならない課題が山積していることがわかる。特に、看取りを見据えた介護、介護報酬のジレンマ、介護離職や他業種との相対的低賃金、外国人労働者の受入れを含めた現状課題は丁寧に整理されている。国家財政の見通しは甘い気がするが、“療養介護福祉士”の創設などは優れた提案だと思う。2016/12/07

お茶

7
当然のことながら、現在「在宅介護」はほとんど機能しておらず、介護施設の存在を抜きには考えられない。その意味で介護制度全般の概説になっていることは仕方ない。目新しい内容ではないが、一般の方には解りやすい説明になっていると思う。著者の考えは最後の章に述べられている。必ずしも全般に賛成はできないが、介護は「社会投資」として考えるべき、という立場は大切。准看護師と介護福祉士の統合、というのは面白い。2017/03/02

パット長月

4
予備知識ゼロだと、やや苦しいかもしれないが、「在宅」のみならず、制度全般に関する基本知識に加え、著者自らのフィールドワークによる運用実態の肉付けが与えられて、単なる制度の表面的な解説に終わらず、とても勉強になる。また著者の政策提言も、特に年金関連の新書本によくある、恐らく数ある選択肢のひとつにすぎないような提案を、著者の主張で素人に押し付ける類のものとは一線を画し、地に足の着いた示唆的で実践的な議論である。読み終えて、オリンピックの競技場ごときに巨費を投じる余裕が今の日本にあるのか、暗澹たる気持ちになる。2015/11/15

Akira Kumoi

4
題名のとおり在宅介護の背景や歴史、問題点や今後の政策への提言など幅広い内容で面白かったです。新書という性格上、内容が浅く広くなるのは無理もなく、個々で興味のある分野は専門の本を読んでみようと思います。2015/10/26

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