内容説明
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。若い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の6篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
237
藤原さんといえば直木賞&江戸川乱歩賞W受賞作『テロリストのパラソル』が必須&必読で、『ひまわりの祝祭』など、とにかく作品のテーマに対する造詣が非常に深く、読む側にとても勉強になる作品を遺してくれた偉大な作家さんです。執筆期間が限られ、作品もそう多いとは言えないと思いますが、そんな作品の中でも一番印象的なのが短編集の本作です。とにかく文章が芸術です。こんなにも人のココロをとらえ、響かせる文章を書く作家さんはそう多くはないと思います。表題作の読後感はまさしく‘感無量’の一言に尽きるのではないでしょうか。
おしゃべりメガネ
181
タイトルからして今読むにはピッタリな作品かなと。私の読書生活にて読了した短編集の中でも、間違いなく1、2を争う無双状態の作品です。6編からなる作品ですが、どの作品もとにかく登場する'オッサン'が素晴らしくカッコいいんです。特に表題作はもう久しぶりに涙腺をガッチリやられてしまいました。もちろん他の作品、どれも味わい深くて、短編でここまで読書のココロをガッチリと鷲掴みできる作品は決してそう多くはないと思います。どこか皆さん、少し'影'のある雰囲気がこれがまたたまらない作風を演出しており、至福の読書でした。2017/11/25
佐々陽太朗(K.Tsubota)
172
あぁ・・・やっぱりイイ! 「雪が降る」に表現された男と男の絆、男と女のの綾、いいねぇ。「紅の樹」の生真面目さ、これもまたイイ! 伊織さんの紡ぎだす物語りに酔いしれました。次は『テロリストのパラソル』を読もう。前に読んだときとはちがう新しい発見があるかどうか、ワクワクしてます。2016/01/12
いつでも母さん
169
良いわぁ~この【藤原伊織】短編6作品。一気に読み切った。大人の男の色気も有って良い。どの作品も良かったが、タイトル作と、『紅い樹』が私の心のど真ん中に響く。ラストの『ダリアの夏』に出てくる女・由利も好きだ~しばし余韻に浸っていたい。2016/02/04
遥かなる想い
167
母を殺したのは、志村さん、あなたですね..という始まりは読者をいやでも物語の中に引き込む。男の封印された記憶を徐々によみがえらせていく世界はまるでトマス・クックを彷彿させる。2010/05/27