内容説明
国家に、警察に、マスコミに、もうこれ以上騙されてたまるか――。桶川ストーカー殺人事件では、警察よりも先に犯人に辿り着き、足利事件では、冤罪と“真犯人”の可能性を示唆。調査報道で社会を大きく動かしてきた一匹狼の事件記者が、“真実”に迫るプロセスを初めて明かす。白熱の逃亡犯追跡、執念のハイジャック取材……凄絶な現場でつかんだ、“真偽”を見極める力とは? 報道の原点を問う、記者人生の集大成。※新潮新書版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
340
著者の今までの取材の遍歴がわかった。北関東連続殺人事件は他の本で知ってたが、桶川ストーカー殺人事件も詳細を読むと衝撃だった。記者クラブ制度の問題もわかった。しかし調査報道はメディアの側ももっとやってほしいな。2016/02/04
美登利
95
清水潔さんの著作は何冊か読んでいるので少し重複する部分も有りましたが、この本は清水さんの報道に対する姿勢を表したものです。これまでに疑問に思った事件や、真実を知りたいと思ったことに強い執念を持ち、果敢に行動してきたその姿勢には感服致します。私はここに取り上げられたテレビでの映像は見ていません。新聞、雑誌、テレビも真実だけを流すのでは無いということを今更ながら深く感じます。幾つか知らない事件、半分は笑い話になるような失敗談も取り上げられています。まだ「ルパン似の男」は野放しなんですよね、謎だし、怖いです。2015/11/30
hatayan
77
桶川ストーカー殺人事件で警察の欺瞞を暴いた『遺言』、幼女殺人事件の冤罪に向き合った『殺人犯はそこにいる』を著した清水潔氏の報道論。 報じようとする事柄について誰よりも詳しくなりたいと慎重に淡々と取材していると、いつの間にかそれが「調査報道」と呼ばれるようになっていた。 しかし、現場で取材していれば間違いないわけではなく、裏を取らないと騙されてしまう。 最終章では、太平洋戦争の特攻隊員の妻にインタビューして大本営の「発表報道」の罪を告発。のちに著す『「南京事件」を調査せよ』の問題意識につながっていきます。2019/04/01
やんちゃジジイ
66
再読。第十二章、命すら奪った発表報道━太平洋戦争・・・涙が止まらなかった。清水潔氏の著書は全て読んだが、この新書のこの章の内容は涙流さずには読めなかった。悪名高い「大本営発表」。「おわりに」で清水氏は「権力というものが暴走し始めた時にこそメディアはそれを抑止しなければならない。」とある。まさに今がその時ではないだろうか。2018/12/14
したっぱ店員
55
「殺人犯はそこにいる」の著者が、取材した事件色々について明かす。スクープとは速さを競うものよりそのままでは埋もれてしまう真実を明らかにするものでありたいという著者の信念が頼もしい。しかし昨今少しは表に出るようになったが、記者クラブというもののあり方には改めて疑問しかない。最後の戦時中の話には泣かされた。二度と誰もこんな目に遭うことがありませんように。2020/05/21