内容説明
今世紀最大の国家プロジェクト問題の本質に迫る
劣化するものづくり日本現場からの警鐘
コストの膨張など様々な問題が指摘された新国立競技場の旧整備計画。
最前線の建築実務者たちは手をこまねいていたわけではない。むしろ努力を惜しまず奮闘していた。
国家プロジェクトはなぜ白紙撤回を招く結果となったのか。問題の構図を取材するなかで、「ものづくり日本」が抱える課題が見えてきた――。
デザイン監修者のザハ・ハディド・アーキテクツをはじめとするプロジェクト関係者の証言などを交え、失敗の教訓を読み解く。
【主な内容】
第1部 幻となったザハ・ハディド案
・「新国立」ついに白紙撤回
・ザハ・ハディド事務所の蹉跌
第2部 失敗の連鎖で迷走
・「衝撃」のザハ・ハディド案
・建築家・槇文彦氏らの批判
・桁外れな巨大施設の試練
・旧国立解体で談合疑惑浮上
・ECI方式導入の賭け
・突如浮上した計画見直し
・「開閉屋根」の失速
第3部 新国立 失敗の本質
・リーダー不在が生んだ悲劇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
48
建築業界では有名な日経アーキテクチュアが編集。ザハ案を巡る新国立計画の混乱が詳細に描かれている。建設業界の人間として、サッカー好きな人間として、計画全体のマネージメントがあまりにお粗末で悲しくなった。 事業主体であり、発注者であったJSCの「どうせ税金だし、政府の意向に沿っておけば問題ない」という姿勢が透けて見える。理念って大事なんだと改めて思う。2021/10/01
ゲオルギオ・ハーン
22
「新国立競技場」が白紙撤回された原因を関係者へのインタビューを入れながらまとめた一冊。結論としては発注したJSCの計画力に問題があった。設計はインパクト重視。予算は青天井感覚。関係各所との折衝は政財界の重鎮による有識者会議と審査委員会を設置してお墨付きをもらえばOKという見通しで進めた。実際は建築業界の第一人者たちを中心に反対され、見直しとなった。そもそも建設後に維持していく事業計画の視点もないため白紙撤回していなかったら莫大な赤字を垂れ流し続けていただろうと恐ろしくなる。2022/05/15
しーふぉ
18
ザハ・ハディットが悪者みたいになっているが、デザインを予算に応じて変更することなど誠実な対応をしていたとのこと。また、あくまでもデザインであり設計ではない。リーダー不在で予算を上限だとは考えていないことも問題。作った後の利用についても8万人規模のイベントとは?赤字を毎年垂れ流していく遺産になりかねない。2016/10/23
スプリント
5
迷走を続ける新国立競技場計画の実態に迫った本です。個々はベストを尽くしたが全体を取りまとめる組織が不明確・無能だったことがよくわかります。建設計画は発注者・設計者・施工者が存在しますが、発注者に責任も知識がなく、国民の血税を使うというコスト意識が皆無だったことが見て取れます。計画は見直しになりましたが、更に「聖火台」をまったく考慮されていなかったというお粗末な事態が発覚しており、もうダメなんじゃないかとあきらめの境地に達しています。2016/03/19
Hiroo Shimoda
0
全体の絵を描き、責任を取る人間がいなかった事が「やり直し」の原因。あれやこれや盛り込み過ぎたんだろうね、おそらく。2016/04/21