使える哲学

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使える哲学

  • ISBN:9784799318232

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内容説明

西洋の哲学書を読んでいると、わかりにくいところにぶつかる。
翻訳によって無理やりつくられた哲学用語が難解なせいもあるが、西洋人の思考の根本的なところが、日本人には腑に落ちないのではないか。
では、それはいったい何なのか? 
著者が気づいたのは、西洋人の思考には「向こう側」の世界というものが存在するということだった。

「向こう側」というと「あの世」とか「神の存在する世界」とか思うかもしれないが、そうではない。
西洋人の思考では、われわれの五感に感じる世界は「こちら側」で、こちらからは見えない、感じられない「向こう側」の世界というものがあるらしいのだ。
その「向こう側」は日本人の考える「あの世」ではなく、「この世」に属する。そして神のいる世界につながっているのである。
「向こう側」にはわれわれには感じられないが、「こちら側」の世界の根拠になるようなものが存在している。そう考える西洋人は「向こう側」を探求し、目に見えない、感じられない物質の存在を発見し、近代科学を興隆させた。

しかし、そのように近代科学を発展させるのに貢献したのは西洋哲学の中でもイギリスの哲学だった。明治以来日本で重んじられてきた、カントやヘーゲル、フッサールなどのドイツ哲学は「向こう側」を否定し「こちら側」だけで教養を磨けば精神の高みに到達できると説き、近代科学に貢献しないばかりか、人々をいたずらに観念に迷わせることになったのだった。

では「向こう側」をどのようにすれば知ることができるのだろう?
著者によれば「向こう側」を知る方法には「直感・超越」「にじり寄り」「マーカー総ざらい」といった方法ものがある。
たとえばビル・ゲイツがソフトウェアとハードウェアを分けることを思いついたのは「直観」であり、グーグルの創業者の発想は「マーカー総ざらい」となる。
「向こう側」へのアプローチは近代科学を興隆させたが、現代でもビジネスの現場でイノベーションが起こることに貢献しているのだ。

また「向こう側」の根拠を考えるようにすれば、生きている意味や仕事をしている意味を実感できるようになっていく。ただしそれには個々の「自分」が生きている意味や働く意味ではなく、人間の根拠であり自分の従事している業種の根拠を考えることだ。

哲学が真理を教えるものだというのもドイツ哲学の悪い影響である。哲学というのはただ、哲学者が人を説得しようとしている話を聞く(読む)というだけで、別に真理を教えているわけではない。もしそこに自分にとって役立つ考え方があったら、それを利用すればよいだけなのだ。

本書は、哲学を「学ぶ」のでも「信じる」のでもなく「使う」ことを読者に勧めるためのものだ。ビジネスパーソンでも医師でも、教師でも学生でも主婦でも、それぞれの場所で「向こう側」を探求して、イノベーションを起こしていっていただきたい。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やまと

2
歯切れの良い主張が次々と並び、意図していることがわかりやすい。 ・近代科学に役だったのはイギリス哲学。ドイツ哲学は科学に役立たないばかりか、人々をいたずらに観念に迷わせた。 ・「すぐには役立たないが教養として必要だ」は意味がない。学問の目的は、常に今の説明に置くことが大切。 ・インターネットの情報集合体は確実に存在し、理想の普遍知より役立つ。 実在論、唯名論という用語は使わずに、「向こう側」の世界を信じるかどうかという著者独特の表現で哲学が語られており、読みやすい。 2016/03/08

kousan

1
若い人に勧めたい本ですね。何のために生きるのかをも問える課題です。2016/12/21

ぽん教授(非実在系)

1
前著『ヨーロッパ思想を読み解く』をベースにしながらもビジネスマン向けかつ最新の時事に対応させて解説しているので、前著の解説本としても応用編としても読める。イギリス経験論を血肉化しその有用性を発揮することで、実体の向こう側を超越・直観・にじり寄り・マーカー総ざらいを駆使して触れることができるようになり、イノベーションを起こしやすくなることが可能である。有用性のないドイツ観念論や芸術以外ではウソでしかない脱構築に溺れる我が国のダメ人文社会知識人を横目に追い越し、優位に立てるからである。2015/12/21

jin

0
毎日コツコツ仕事し、次の段階を準備し、そしてときどき、大胆に飛びましょう。2017/05/18

残心

0
自論が気持ちよく展開されており、読んでいて気持ちよかった面と、興ざめな面がありました。 ドイツ哲学が役に立たないとか言ってますね。 そもそも「向こう側」というのが自分にはよく理解できなかった。(未熟者) 「理想は人に迷惑をかけるから、希望だけあればいい」は、一理あるが、つねに正しいとは思わない。 著者の考えが正直に書かれており、うまいことまとめるような昨今の本の中では、面白い本でした。2024/02/15

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