内容説明
王朝末期、妻の不義を知った刑部丞が、くやしさ、苦しみを経ていきついたある妙案とは――?(「王朝の不倫」)。死んでしまった最愛の子に会いたくて、父はえんま大王に願いをかける――(「死児に逢いに」)。戦乱の世に咲いた、はかない恋。姫は白菊の精と契ったように身ごもるが……(「白菊の契り」)。今昔物語をはじめ、様々な古典の中から、愛とユーモアと知恵にみちた十八話を選び、田辺語訳した、軽妙で奥が深い物語の花束。岡田嘉夫によるオールカラーの華麗な画と共に愉しめる、贅沢な今昔絵草紙。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kira
21
何度目かの再読。読めばいつでも、至福の時間を約束してくれる。岡田画伯の絵が美しすぎて眼福。十八篇の説話のストーリーと解説がエッセイ風に綴られ、説話好きの身にはたまらない。気が向いたときにいつでも手にとれるところに置いておきたいほど、気に入っている絵双紙。2024/03/20
Kira
18
数年ぶりの再読。説話と美しい絵巻風の挿絵にうっとりした。岡田画伯の絵は好きで何度か鑑賞してきたが、今回初めて、その画風がカイ・ニールセンの初期のものに通じているのではないかと感じた。本書の構成は語りのページの次に見開きで挿絵があり、絵だけをめくっていくと絵巻物を見ているような楽しさがある。味わい深い説話と絵巻で眼福至極だった。2023/02/10
おゆ
12
文化出版社刊「うたかた絵双紙」の文庫版。岡田嘉夫さんの華麗な挿画がめあてだったけど、お話もたいそう面白くてあっという間に読んでしまった。今昔物語集、日本霊異記、御伽草子、宇治拾遺物語、さまざまな説話集からこれぞという魅力的な物語を拾い上げる。ときに愉快にときに哀切に、けれどいずれも美しく思い入れたっぷりと語る田辺さんの筆は、本当にいきいきしていて魅了される。岡田さんの描くものは天竺・震旦の男女も、情熱的かつどこか滑稽で愛おしい。絵巻物を少しずつ広げていくような装丁も心にくい。「獅子と母子」「死児に逢いに」2017/02/17
Kira
8
豪華絢爛という言葉がぴったりの現代版絵草紙。田辺氏が好みのままに選び解説と現代語訳を加えた説話十八篇に、岡田氏による華麗な挿絵がついている。千代紙を散らしたようなオールカラーの絵だけをめくれば、絵巻物を見ているような気分を味わうことができる。今昔物語集を中心に編まれた十八篇はいずれも面白い。 2017/12/01
カムラ
5
とても気に入った。大学で専攻した程度には日本の古典が大好きだけど、ミーハーではあり原文で一冊通読したものはほぼない。知識量が少ないから、こんなふうに易しく古典の魅力を紹介してくれる本はありがたい。しばらく現代作家の本ばかり読んで何かを探していたけど、この本で原文の引用や要約、和歌を見て「私が探していた世界観はこれだった」と目からウロコが落ちたような気持ちになった。学校の勉強ではなく趣味の読書として古典に触れられる今、いろいろ楽しんでいきたいなとか思った。内容だけじゃなく、挿絵もとても綺麗で惹き込まれた。2024/05/23