内容説明
パリで大規模な交通事故が発生。深夜、そのニュースを目にした「付き人」は、相変わらず連絡のない「黒猫」の安否が気になっていた。一年前、イタリアで二人の距離が縮まったと感じたのは、勘違いだったのか……。互いに研究で多忙な日々を送るなか、いつしか声を聞かない時間ばかりが増えていた。そんな時、大学院の後輩・戸影からペルシャ美学の教授が失踪したと連絡を受ける。黒猫のことが気になりつつ、付き人は謎を追いかけていくが――。待望のシリーズ第6弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スパシーバ@日日是決戦
91
B (2015年) イタリアでの偶然の再会から一年が経過。同い年(24歳)の同期でありながら片や客員教授、片や付き人に甘んじている状況。各短編の評価は以下の通り。「◎ 戯曲のない夜の表現技法/男と箱と最後の晩餐」「〇 空とぶ絨毯/独裁とイリュージョン/笑いのセラピー/涙のアルゴリズム」。エドガー・アラン・ポーの作品に対する解釈を通じて、スマートに謎が解明されていく(トレビアン!)。恋をしなければ成就も片想いも失恋もへったくれもない。傷つくのが嫌だという方、恋愛することの素晴らしさを感じてもらいたい。2016/07/08
もも
57
黒猫シリーズ6冊目。今刊行されている所までようやく追い付きました。お帰りなさい黒猫、と言いたい。日本に帰国した黒猫。付き人ちゃんとの距離はお互いにきごちないところも。1巻目を思い起こす短編集という形式。いろんな意味で回帰だなあと思います。どの話も物語の根底にあるのは『愛』で。ポオのテクストを絡めた美学講義は相変わらず面白いのですが。やはり気になってしまうのは2人の関係。研究者としても謎好きな2人はお似合いだなと思ってしまう。そして大きく前進した関係。もうエピローグびっくりした!思わず読み返しました。2017/02/26
みっちゃん
53
黒猫ー!グッジョブ!ため息が出るほど素敵な話だった。もう続きは無いのかな…だとしたら寂しい。2016/02/06
むつぞー
51
黒猫おかえりなさい~~! 今回は連作短編であることもあって、1作目を思い出す部分も多く、だからこそ2人の距離の違いが際立ったと思います。 他の人の想いが謎にもなっていた多くの物語があるからこそ、エピローグの甘さが際立ったのではないかしら。 1巻目からグルリと旅して同じ位置に立っていて、このままシリーズ終わりなのかしらと、ちょっと心配。 キレイにまとまってはいるから終わりでもいい気も知りけど、相変わらず美学の講義は難しい物があるけど、でもこのシリーズ好きなので、続いてくれると嬉しい。2016/01/07
藤月はな(灯れ松明の火)
50
責任性は問いやすいが、衝撃が自然よりも強い人災としての「空飛ぶ絨毯」の理論は現実と被さるだけに辛かったです。あの二人が二度と離れずにいますように・・・。「男と箱と最後の晩餐」は箱の中身に『魍魎の匣』を連想してしまって(笑)でも真相はとても切なくも、ただ一人のその人を愛することの強さが感じられて好きです。冷花さんが付き人に言った言葉には心底、同感。自分の美しさに鈍感でも異様に謙遜する女って人によっては「謙虚を装った傲慢な女」にも受け取られるのよ。でもラストにはニッコリしてしまいました。ああ、やっとか・・・。2016/02/04