内容説明
人間の<危機>を凝視しつつ、<幸福な人生へ向かう>思索の可能性を存分に論じきる―知の巨人による大胆な試み。あなたはまだ知らない。自分の存在と世界との新しい関係を手にしていく感覚を。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
29
自分のコトバでモノを考えるって、こういうことなんだなあ。『知の技法』の小林先生、語りおろしをもとにしたという成り立ちを存分に活かして「思考の過程」というものを味あわせてくれる。◇とくにワクワクしたのは「権」という字のくだり。支配する、意味を与え、世の中を成り立たせる「権力」の「権」は、たまたま、「権大納言」などの「かりの」「非常の」という意味を持つ。それを利用して、「緊急、非常の時の判断こそが権力の本質」というふうに考えをすすめていく、思いつきと本人が言うように、ふだん表に現れないその過程が刺激的なのだ。2015/05/27
かもしか
12
そうだよね…そうだよねと、呟きながら長い間かけて読了!一度通った道を、また通い出さなければならないのか……というなんとも言えない徒労感と、また歩き出せばいいじゃんと、軽く背中を押してくれる感覚。僕は間違ってなかったんだよなぁ…という2つの絡まった感情に包まれる…。そう!また、ガラクタ集めよう!そして、筆者がガラクタ細工・ブリコラージュと呼ぶ、"希望"の実存的・神話的装置を、また、一から、自分の感覚だけを頼りにして、編みあげよう!何の希望もない、という希望を胸に。自分自身が湧き上がる"泉"であると…!2015/09/04
nrk_baby
6
退官なされた小林先生の著書。じっくり読んだ。2015/04/19
anaggma
5
[なんかひっかかる。なにか言いたいんだけど、それはなんだろう。みたいな感覚]をキーにして、手垢のついていない小林先生自身の表現で哲学しているお姿をただただありがたく拝見する本。2017/07/18
Kazehikanai
5
東大を退官する著者が思いつくままに「語り書いた」という。「わたし」のある場所、その意味について、現代という背景とともに考えさせてくれる。涸れ井戸に一人で座っている現代人の、免疫不全に陥りつつ、生と死という二つのトンネルに挟まれた人生を、どう捉えるべきか。当然正解の出ない問いに対しての対峙の仕方、というかその対峙の仕方の捉え方について示唆に富んでいる。哲学の難しさ、取っつきにくさは皆無。短い本で読みやすく心が弾むおもしろさで、若者向け。だが、意外に深く、涸れた井戸に水が湧いてきそうな本。2015/06/07