内容説明
物と観念が交錯する「アラベスクの世界」。
蟻地獄の観察日記をつけ、好きな花といえばタンポポ。そして76年に一度飛来するハレー彗星を待ちわびる。裸体・虫・ポルノ・飛行船・地球儀……。古今東西の書籍を渉猟し孤高の境地を拓いた文学者が、初めて「私自身」=ミクロコスモス=を語りつつ綴った、物と観念が交錯するアラベスクの世界。
1978年30回にわたって「朝日ジャーナル」に連載された澁澤龍彦後期のエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YO)))
18
集中「反対日の丸」に、幼時に「無限の観念に最初に触れた」ときの話が書かれてある。コンデンスミルクの缶のレッテルに、エプロン姿の少女が籠を持っている絵が描かれていて、その籠にはコンデンスミルクの缶が入っていて、その(籠の中の)缶にもまた籠を持った少女が描かれている…。澁澤によると、ミシェル・レリスも、ココアの箱についてまったく同じ経験を語っているとのことで、「同じような経験をかなり多くの人が味わっているのではないか」と書いた上で、(続く)2020/01/05
aki
9
澁澤龍彦のエッセイ。昔の思い出とか、好きな花(タンポポ)とか、男女の思い出とかを、こんなに鮮明に色濃く思い出せるものかとびっくり。かと思えば、「テレビ」のように、テレビの使い方がわからず自分の保守性を実感するなど一般人の日記を読んでいるかのようなストーリーも読めて面白かった。2016/09/23
ももや
4
C +D booksというシリーズ。いまどきペーパーバック。なんと渋い。しかも澁澤龍彦でしかもしかも玩物草紙。渋いねー、大人の渋さだねー。ペーパーバック、軽いねー。京極夏彦1週間持ち歩き後遺症の肩こりが解消だ。想像力がキラキラ宇宙を駆け巡る。いいねー、こういう人になりたいもんだ2018/07/26
ゆきだるま
3
氏のエッセイ集の中でも個人的な、日常的なことが多かった。それもふわふわと脱線して幻想的になったり、あちこちに知識が散りばめられているのがいい。「ここで扱われているのはむしろ観念、あくまでも私の生きてきた観念の世界であろう。」 「テレビ」の話が特によかったな。 2021/06/24
札幌太郎
3
澁澤龍彦は小児である。彼自身もそれを認めている。彼のいう快楽主義とは、つまり無責任な児戯的爽快の中に常に身を置くということに他ならない。 そんな彼が、自ら愛するおもちゃやオブジェ、思い出について語るのだから面白くないはずがない。澁澤エッセイは、ヨーロッパのもってまわったような逸話が多く描かれるが、そのほとんどが嘘である。そんな嘘ついてでも面白がりたいのが澁澤だから、とも言えるのだけれど、この本には多分嘘はない。澁澤少年と遊びたい人は一読すべき。2006/11/20