内容説明
将軍世嗣の住まいである西丸の書院番に引き立てられ心浮き立つ伴鍋次郎だが、両親はなぜか狼狽する。町で会った初対面の老武士にいきなり土下座され、不審は募るばかり。そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。いったい私はいったい誰なのだ? 注目作家による傑作長編時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
48
陰湿すぎるような気がしました。主人公が理不尽な侮蔑に対する復讐の息子というのに鳥肌が立ちますね。最後の終わり方にじんときます。2021/06/13
バニラ風味
20
鍋次郎は妻が懐妊し、自身も西丸書院勤めが決まり、ささやかな幸せを感じていた。しかし、ある日、出先で鍋次郎の顔を見た武士が、ひどく狼狽し取り乱すのを見て不審に思う。自分は一体、誰に似ていたのか。それを機に自分の本当の出自、真の父母のこと、過去の壮絶な事件を知り、憤りを覚える。題の「ふくろう」は真の父が、鍋次郎に残した手作りの根付けのこと。自分の現在、父の過去を照らし合わせ、鍋次郎は悩み、自分がたどるべき道とは、を考えさせられる。悲しい話だが、後口は清涼だった。2016/01/06
えりまき
18
2022(331)実際に起きた事件。江戸時代のパワハラ。暇つぶしの新人いびりは、逃げ場のないひどい話で、読んでいてムカムカしました。殺してから自殺してしまうのは凄まじい。ハラスメントは昔から全く変わらないのだと残念です。 2022/12/31
蕭白
10
前半のコミカルな雰囲気は大好きでしたが、後半の主人公の父親についてのくだりは読んでいて胸が痛くなりました。エンディングはこれでよかったと思いました。2016/05/01
タツ フカガワ
9
旗本の伴家で嫡男の鍋次郎が西丸書院番士として出仕することに。ところがある日鍋次郎は、自分が伴家の養子で、実父は江戸城内で5人を殺傷した松平外記だと知る。同じ書院番士の外記が受ける嫌がらせが凄まじく、疑心と怒りと抑制を繰り返す外記の胸の内は読むのが辛くなるほどでした。のちに「千代田の刃傷」と呼ばれる史実の内側は、現代のハラスメントとなんら変わらない。が、「ふくろう」に込めた外記の愛が感涙となりました。2018/06/19