内容説明
昭和30年代半ば、波瀾に満ちた青年期を送った「彼」は九州から上京、作家を目指す。同人誌「文藝首都」に在籍し、名を成す手前にまで達するが、森敦と中上健次、2つの才能に打ちのめされる。そして苦悩の末、純文学作家からの転向を決断した。エンターテインメント小説の巨匠、最初で最後の自伝的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
22
小谷野敦の本で紹介されていて手に入れる。エンタメ作家が70才になっての自伝小説。著者の半生を三人称で語る。妻、二号、三号との女性たちとの話が本流。武勇伝ではなくて、自責の念に満ち満ちていて痛ましい。特に読みたかった箇所が、著者が19才の中上健次と森敦に出会い、流行作家としての道を選ぶ過程だ。彼は芥川賞と直木賞候補にもなっていたが自分の資質に違和感を抱いていた。そこで本物の才能に出会い、純文学を諦めてしまうのだ。流行作家として成功し、月産1000枚という量産を続けるが…… 作家の業をひしひしと感じる。良書。2014/10/06
佐藤一臣
6
自伝反省文ですね、家族への。悪い人ではないし、才能もあり努力家でもあるのがわかります。女性や家族への恋愛と自我構築の葛藤の中で、自分のタイミングでしか行動できなかった等身大の自分を顧みた回顧録とも言える。純文学作家として描くべきコアがないという欠落感は、熱狂的な新興宗教に染まらないのと同じで信頼できるなあ。夜光虫の前の自分史はつまらないが、それ以降の恋愛や中上健次、森敦との出会いは面白い。周りから愛された人なのだというのが感じられる作品ですねー2021/11/13
詩界 -うたか-
6
初読み作家/自伝的小説。思ってたのと違ってエロ系が入っていて読みづらかった。2020/02/06
葉隠
2
なかなか味のある自伝でした。 2020/04/07
秋良
2
小説としての感想はさておき、こんな男が旦那だったら(恋人でも)たまったもんじゃねえわ、という、もうそれに尽きる。ぐおぐおした情念みたいなものが迫ってくる。2013/06/01