内容説明
『殺人鬼フジコの衝動』の真梨幸子、とっておきのイヤミス。カンタベリーへの道中、同じツアーの参加客が各自、とっておきの不思議話を披露し合うことに。そこで見え隠れする客同士の接点。疑心暗鬼に陥った時、人は欲望をどこまで自制することができるのか? 5つのパワースポットを軸に交錯する幸せと不幸をあぶり出した、イヤミスの臨界点! (『聖地巡礼』改題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
171
期待どおり、なかなかグイグイと切り込んできましたね〜。連作短編集ですが、繋がりはさほど気にならずに読んでいけます。表題作の'イヤ'度はかなりキツめなレベルでした。フィニッシュもしっかりと「うわぁ…」っと期待どおりです。パワースポットをテーマにミステリー感も保たれており、精神的なキツさもなかなかですが、小さな'仕掛け'に思わず唸らせる作品でした。『イヤミス短編集』よりは、さらに高度?なイヤミス感が醸し出されており、どうしてこうも女性の奥底に眠る闇な部分をさらっと綴ることができるのか改めてひれ伏せました。2020/03/04
H!deking
100
パワースポットに纏わる短編集。なかなか面白かったです!あとがき読むと、ブレイク前夜の作品みたいですね。国保払えないとこまでいってたのか。人生何がおこるかわからないなー。俺もパワースポット巡り行ってみよ(笑)2019/08/24
モルク
93
真梨さんのイヤミス短編集。いつもより控え目なイヤミスというところか。連作というか所々登場人物や話が繋がっているところもあり、うっかりしていられない。でも他の真梨作品に比べて人間がごちゃごちゃしていないのでわかりやすい。「グリーンスリーブス」と表題作が好き。まだ売れる前(フジコ以前の)真梨さんということで、多少物足りなさはあるが、彼女らしさはうかがえる。こういう初期の頃の作品にふれられることも楽しい!2018/04/15
アッシュ姉
90
著者十六冊目。パワースポットをお題に登場人物がリレー形式でゆるく繋がる連作短編集。メモ不要でいけちゃう読みやすさ。どぎつくなくてさっぱりしてるけど、真梨さんが恋しかったこともあって楽しめた。毒控えめながら中毒性あり。ご本人によるはしがきとあとがきが面白い。デビューして五年、まだブレイクする前に書いた作品だそう。フジコは発売直後に大ヒットのイメージがあったので、崖っぷちの時代があったとは驚き。ずっと追いかけたい作家さんなので売れっ子になってよかった。2020/06/23
masa
80
未知のウイルスに街がすっかり汚染された今、パワースポットの力も弱まっている気がする。「他人より多くを得たい」「生き永らえたい」という欲望が土地に呪いのように宿り、幻想を生みだして聖地となる。あたかもそれは地球の意思のように語られるけれど、実際のところは真逆なんじゃないかと思う。つまり、ウイルスによって半ば強制的に人は物を所有することを諦め、寿命を受け入れざるを得なくなった。その結果として、環境は少なからず回復し、地球は失われていた星空を手に入れた。何が僕らにとっての幸福かなんて、きっと最後までわからない。2020/07/18