内容説明
自殺志願者から自殺に見せかけた殺人を請け負う「おれ」の前に、「砂漠の男」が現れ、世代交代を突きつける。老いた殺し屋の日常を乾いた文体で描く現在、その出生の秘密が描かれる過去。平成ライダーの名作を次々と生んだ脚本家による異形の本格長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうちゃ
16
☆3 鋼鉄のような肉体の維持に心血を注ぐ高齢の殺し屋の日常を、出生の秘密と成長の過去。平成仮面ライダーシリーズの脚本家による、荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンタメ。2016/04/12
METHIE
10
自殺志願者専門の殺し屋の生い立ちと体がおとろいていき、若い殺し屋にその役割を奪われていく話、 「海の底のピアノ」もそうだったが井上敏樹の小説はヒーローも怪人不在の世界が描かれ、する事は日常を過ごしたり、体を鍛えたり、趣味を過ごしたり、犯罪をおかしたり、セックスをするぐらいしかないのである。 男の出生も売春島のボットン便所から生まれるという小説版仮面ライダー龍騎の浅倉を彷彿とさせる。一家心中の話はやめてくれと思いつつそこから癌の予兆があり、一種の罰なのかなと思う。 コメント欄に続く。2016/06/14
三毛猫座(みけ
3
ハードボイルド!あまり自分が読まないタイプの本だが、すらすら読める。好きか嫌いかは分からないが、独特の世界観があり、良い小説だと思う。2016/01/04
ベルカ
2
最近のあの事件を連想せずにはいられない「自殺請負人」の話。この主人公ほどではないにせよ、生まれついての怪物的な思想の人間は実在するのだろうか。『海の上のピアノ』が衝撃作だったのに比べると今作はイマイチ乗れなかった。2017/11/10
Y.C.STUPID
2
大好き。大胆なイメージが集結して「おれ」に集うラストは、ほんとに凄いぞ。あの風景を描けるんだから。意味を連結させず匂わすにとどめ、分からないこと理解できないことも多いのにどうしてこんなに心に残るのか。戦車と月だの、乾きの中に詩情がぽこんと出てきて印象に残る。「おれ」のキャラクターの独特さは、近年の文芸で随一ではなかろうか。ガワだけ取り出せば良くあるかもしれないが、読んでみれば独白の内容が独創的で、彼の哲学を楽しむだけでも元は取れる。小説ってのはこれでもいいのだ。2016/01/03