内容説明
第二次大戦以前に、アジアの非キリスト教国で憲法と議会制度の定着に成功したのは日本だけであり、その裏には、官民一体となった営々たる近代化の努力があった。現在の「常任委員会制」と対照的な「読会制」、選挙の制度と実態、政党の役割、代議士の生活、弁論術と放言・失言の数々…。人々が「議会」に理想を描き、「政治」に熱く心を寄せた時代。そして、戦時体制へと向かう帝国議会の限界と、戦後の国会誕生の過程を検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
14
個人的に戦前政治史はかなり好きな範囲で、政治家の評伝などの個別の内容については多く学んできたが、本書は帝国議会の制度や慣習についてまとめてあるので新たな視点を獲得できた。選挙の買収、議場での失言や暴力などダーティな部分の記述も多くて面白い。2023/06/27
MUNEKAZ
9
内閣や政党史ではなく、「帝国議会」の制度や実際の運用などを紹介した一冊。議員たちの回想や証言も多く取り入れ、戦前の国会論戦や政治活動が生き生きと伝わってくる。現在の国会との相違点、とくに個別の委員会がなく読会で審議を行う点や、歳費の支給が少なく代議士が経済的に厳しい立場であったことは興味深いところ。また英米と比較しての日本の議員たちの演説の特徴として、当時の基礎教養であった漢文の影響を挙げているのも面白い。いずれにしても敗戦の焼け野原からいきなり日本の民主主義が始まったわけではないことがよくわかる。2019/07/29
さとうしん
3
議会政治史・政党史といった通史的な内容よりは、代議士と「カネ」の問題・弁論・議会改革の流れといった各論が読みどころ。特に弁論に関しては、英米の政治家の弁論との比較、「漢文脈」との関連など、分析のしかたが面白い。対句の多用については、孫文・毛沢東といった中国の革命家や、現代中国の政治家の弁論と比較してみるのも面白いかもしれない。2016/02/12
ジュンジュン
2
本書の狙いは、GHQがその影響力を行使して生まれた現国会を称揚するため、不当にマイナスイメージのついた戦前議会を正当に評価しようといったところか。個人的見解としては、ある程度は成功しているものの、帝国議会の脆弱性や限界(代議士の社会的地位の低さや戦争という非常事態でしか改革案が成立しなかった点など)もまた、浮き彫りになったように感じた。ひとつ面白かった点は、戦後イギリス式からアメリカ式(委員会制の採用)に変わったことが、つまらない国会中継を生んだ原因かと気づけたこと。2016/10/19
matsuri_n
1
模糊としていた戦前の議会制度について理解が深まる良書。平易でありながら政治史の醍醐味に満ちている。今日的な意味でも、議会は国民にとってどうあるべきかという示唆に満ちていて、多くの人に読まれるべき本だと思う。2021/07/18