内容説明
「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像力のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られ、何から自由になりたいのか。ことばによって残された心の断片に渾身の学問的想像力で肉薄する、日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
お茶
5
「この列島上に暮らしてきた日本人の子孫として、いやおうなしにわたしの精神が何をその歴史から受けとっているか、それに規制されているか」を書こうとし『日本陸封魚の思い』と名付けようとしたという。そういうだけのことはあると思い知らされる著作。僕の今の興味関心としてはこの11の作品の中で、オオナムチについて論じた「火山列島の思想」そして出雲のことを論じた「廃王伝説」(そのなかの月読論)、に特に刺激を受けた。それにしてもすごい人だ。2016/01/07
AR読書記録
4
解説・荒川洋治というのが気になって手に取った。1968年に筑摩書房で初版刊行、文庫化ののち、今年講談社学術文庫にて再刊(というのかな)という過程でも、読んでおくべき内容なのかと思い。ただしタイトルから火山を巡る日本人の心性の話かと思ったら、国文学の専門誌に発表された11編からなるもので、話題は火山に限らない。私としては、〈はみだしもの〉、中心を主とする歴史の記述には漏れるものへの視線を強く感じ、そこには著者の戦争体験も大きいであろうことを考える。廃王、鄙、極北、裔、偽悪...タイトルに含まれる言葉から。2015/12/23
あきら
3
古代から中世にかけて書かれた書物の研究をまとめた本。古文や見たことのない漢字もあり、事細かく解説してくれているわけでもないので正直読みづらいのだが、そこを一生懸命読むと何だか面白い。特に大和時代の章、源氏物語の章、源平合戦の章などは、歴史の裏話を読んでいるかのよう。古文にしろ日本史にしろ、学校の授業もこんな内容ならみんな好きになるだろうに。研究書的なものはちょっと苦手だがこれは面白かったと思う。もうちょっと噛み砕いてくれたらなぁとは思うが、頭を使うという観点からもとても良い本。2020/05/10
mittsko
3
1960年前後に発表された11本の国文学論文集。筆者は自らの生きる敗戦後という時代性の自覚のなかで「文学」への視線を保ち、また実証手続きを重視しつつ、その思考は、考古学、歴史学はもちろん、神話学、民俗学、民俗学へとどんどん接続しながら展開していく。大胆な仮説も多く、とても刺激的だ。古代から中世まで、日本史を縦横に結びつける点でも爽快感をあたえる。このような日本文学研究により、筆者は、日本列島が古代から現代まではぐくんできた精神性のあり方、その連続と断絶と変化を究明しようとする。名著です。2018/02/14
小倉あずき
1
つい先日読了した朝井まかての『眩』の終盤に登場した北斎畢生の傑作が表紙絵に使われていて、浅からぬ縁を感じてしまった。 火山は荒魂の最たるもので、そこに生命力をみた我らが祖先たち。 この火山の狭い隙間で細々と命を繋いできた日本人はどこか命に対して執着が希薄なのかな。現代の長寿社会で命にしがみついている我々は日本人らしからぬ日本人となってきているのかな2016/11/05
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