内容説明
微罪容疑によって逮捕,接見禁止のまま512日間勾留された異能の外交官は,拘置所のカフカ的不条理の中で,いかなる思索を紡いでいたのか.神との対話を続け,世捨て人にならず,国家公務員として国益の最大化をはかるにはいかにすべきか.哲学的・神学的ともいうべき問いを通してこの難題に取り組んだ獄中ノート62冊の精華.書下ろし100枚.
目次
目 次
序 章
第一章 塀の中に落ちて ──二〇〇二年五月二〇日(七日目)から七月二八日(七六日目)まで──
第二章 公判開始 ──七月二九日(七七日目)から九月二七日(一三七日目)まで──
第三章 獄舎から見た国家 ──九月二八日(一三八日目)から一二月三一日(二三二日目)まで──
第四章 塀の中の日常 ──二〇〇三年一月一日(二三三日目)から六月一五日(三九八日目)まで──
第五章 神と人間をめぐる思索 ──六月一八日(四〇一日目)から八月二八日(四七二日目)まで──
第六章 出獄まで ──八月二九日(四七三日目)から一〇月九日(出獄後一日目)まで──
終 章
付 録
ハンスト声明
鈴木宗男衆議院議員の第一回公判に関する獄中声明
現下の所感──東京拘置所にて
冷戦後の北方領土交渉は、日本外交にどのような意味をもったか
「塀の中で考えたこと」
岩波現代文庫版あとがき ──青年将校化する特捜検察──
獄中読書リスト
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
389
タイトルの通り終始暗い雰囲気だが、著者の来し方を考えたり、読書をしている所を見ると拘置所や刑務所って人生を振り返る場所なんだろうなと思った。私も犯罪はしないが、こういう集中出来る場所、環境を持ちたいな。2017/04/18
ehirano1
96
4~5年ぶりに再読。本書がきっかけで「太平記」に興味を持ち「新太平記(山岡荘八)1~5巻」を通読したのを思い出し、そろそろ読み返そうか別著者の太平記を読もうか思案し始めました。一方、今回の再読では灰色のユーモア」についての言及があり、当方がここ1~2カ月「ユーモア」について思索を巡らせているのもあって当該書を読んでみたいと思ったら何処にも売っていないようですね・・・2016/10/22
ehirano1
69
著者は「日本人はなぜすぐに謝るのか。それはほんとうは悪いと思っておらず、誤れば許してもらえると甘えているからだ(p103)」と“吾輩は猫である”から引用し国策捜査を考察しています。当方は職場において考えてみました。確かになんでもかんでも直ぐに誤ってくる部下にはなんだか違和感を感じています。その違和感の正体はこれだったのですね、ぐぬぬ。2017/03/12
ニッポニア
55
はい、面白いですね、拘留されている佐藤氏の日記ですね。政治抗争に巻き込まれての逮捕拘留ということです。まあ、この文章を書く人がどうして捕まることになったのか、記録として残すために戦う、とのことでした。その眼光はあくまでも鋭く、アイスクリームを楽しみにする無邪気さ、ひたすら勉強をすることの楽しさを十二分に感じつつ、これが人間、佐藤優じゃい、という感じ。自由に読書ができる幸せを忘れてはいけない、と感じさせる手記です。2023/01/31
100
54
佐藤優氏外交三部作、エピソード3。 塀の中日記的な内容を創造していたら、そこは2割くらいで事件の分析やら裁判対策、弁護団へのレクチャーやらでなかなか濃ゆく、拘留直後の混乱から月日と共に徐々に落ち着きを取り戻す様が文章ににじみ出ており生々しい。 学者と政治家の差は向かうべき理想を追求するか、中近距離の利益を優先するかに現れると思うが政治家による急激な方向転換の犠牲になるメカニズムが明らかにされている。2021/11/08