内容説明
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの内戦で、大量虐殺の罪に問われたラドヴァン・カラジッチ。彼は三島由紀夫の愛読者だった。この事実を知った女子大生・橘アカネは三島をテーマに卒論を書くため虐殺の地へと赴いた。一方、アカネの元恋人・鷲見恭一郎はネトウヨに惹かれて三島へと接近する。それぞれのアプローチが交錯するとき、戦後日本の姿と三島文学の本質が浮かび上がる!没後45年、新たな三島由紀夫像に迫る力作長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
56
凄かった。レビュー登録が88件でいい作品じゃない。良くも悪くも、もっと騒がれるべきだと思う。卒論で三島由紀夫に取組む「あなた」に、ゼミの議論でやたら絡む「君」。その間で板挟みになる指導教官の「私」が主要人物。卒論を通して、「君」は実在の右翼には接近して、「あなた」はユーゴ内戦のナショナリスト指導者を追いかけることで「三島とは何者だったのか?」に迫っていく。右翼活動家が「三島さんの文学は信じる。しかし、三島さんの天皇は信じない。三島さんの天皇は、造花の菊だ」という。すごい。あと、文系ゼミが楽しそうで羨ましい2022/04/02
おさむ
41
同僚に勧められて群像の2015年9月号で読了。三島由紀夫とユーゴスラビアのカラジッチ。2人の共通項とは?そんな命題から始まる物語。戦後史観や天皇制、ヘイトスピーチ等も織り混ぜつつ展開する独特の「ミシマ論」は読みごたえあり。人の生き死には、頭で割りきれないことが多すぎる。理屈で抗するより物語としてとらえた方がしなやかにものを考えられる。その通りだと思います。2016/04/28
安南
40
没後45年、三島事件を再検証することで現代を照射する。こんな小説を書くことができるのは三輪氏以外いないのでは。元恋人同士だった男女学生の戦わせる三島論。2人の手記の形で語られる思索の過程。謎の右翼団体の会員田鶴の三島論…と読みどころ満載でとても刺激的だった。ラスト「本物の憂国者でありたい 」と去っていく男子学生をどう受け止めたらよいのか…考えさせられた。三島論でデビューした氏ならではの傑作だと思う。2015/12/27
ちょき
15
まるでドキュメンタリーのような三島考とボスニアルポタージュの描写。どこまでがフィクションなのか全くわからない。教授目線で語る「あなたと君」の人物の際立たせ方とラストは惜しい感じもするが、それは読者の私こそが凡庸であり実は、作者の掌中かもしれないと思う。2015/11/12
乱読999+α
7
三島由紀夫氏に対する研究論文なのだろうが、大学のゼミでの教授と、相反する意識を持つ二人の学生との遣り取りの形式を取ることで読み易くはしているものの、内容は重厚だった。私にとってこの作品の感想を述べるのは、困難。三島由紀夫についての知識に乏しく、「豊饒の海」も昔、昔に単に「読んだ」と言う程度でしかない。ましてボスニア・ヘルチェゴヴィナには何の知識もない。再度、三島の作品を熟読してから、本書に挑もうと思う。2021/02/08
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