内容説明
20世紀の科学者たちが開発し、実戦に投入された、想像を絶する軍事技術の数々。中でも核兵器は人類に大転換をもたらした。本書は、政治的・倫理的な是非は一切問わず、純粋に物理学の観点から、その凄まじいメカニズムに迫っていく。原子核が膨大なエネルギーを生み出す仕組みから、兵器に利用する際の設計方法、冷戦時代につくり出された究極の産物まで、直視しなければ見えてこない「核」の本当の姿を、素粒子物理学者が描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テイネハイランド
17
図書館本。Honzの成毛眞さんがこの著者の新刊「核兵器」を週刊誌上で推薦していましたが、一万円に近いという価格のせいか地元の図書館にはまだ入荷されていませんでした。そこで同じ著者の別の本をということで本書を借りてみました。この本では、核兵器に使われている核分裂反応や核融合反応について、わかりやすい図を用いて丁寧な説明が載っています。原子力発電は核分裂反応を用いているので、原発関連のニュースを理解する上での基本的な科学的知識も同時に得られました。機会があれば同じ著者による更に別の本も読んでみようと思います。2019/02/10
しゅわっち
15
わかりやすい内容でした。今度著者には、E=MC^2を説明するホンを書いてほしいです。2020/08/09
Hatann
12
素粒子物理学者が、政治的倫理的な是非に触れずに、核兵器の物理学的な側面を平易に語る。原子核の説明から入り、核分裂と核融合の違い、核分裂の連鎖反応と制御方法、核燃料の製造方法、核兵器の種類(核分裂を利用した原子爆弾、核融合を利用した水素爆弾、悪魔のような中性子爆弾)と叙述する。核分裂は、一瞬で素早く行えば核兵器になるが、緩やかに行えば原子炉として平和的に利用される。核兵器は世界最強の兵器でありつつ、最初の2回を除いて70年間実戦に使われてない。愚かながらも叡智を振り絞って踏み止まるために知識を必要とする。2022/04/28
C-biscuit
12
確かHONZか何かのオススメ本。著者の講演を口述した内容であり、非常に読みやすかった。内容は、核開発技術の説明であり、それを兵器に応用というか兵器が先の部分もあるが、その関連性を述べている。核分裂、核融合の基礎から、原子爆弾、水素爆弾、中性子爆弾など兵器としての技術などが説明されており、興味深かった。以前、ロスアラモス関係の本を読んだが、まさに起爆装置は同じ説明である。しかし、記憶はインプロージョン型しか覚えていなかったので、ガンバレル型が新鮮に感じた。リトルボーイの形もこの形状から来ているようである。2015/11/08
nbhd
11
この人の本はテッパンでおもしろいなぁ。核兵器のメカニズムをわかりやすく解説しているのだけど、いちばん「へぇー」となったのは『制御棒』について。核分裂は、中性子がトリガーになる。中性子を核物質にぶつけて、核分裂で生まれる中性子が1回あたり2個。制御棒は、そのうち1個をキャッチする。残りの1個が、次の核分裂を起こす。原子力発電では核分裂が1回ずつしか起きないようにしている。一方、原子爆弾は1回あたりの2個の中性子が倍々連鎖で核分裂を起こし巨大なエネルギーを生む。要するに、「すごい棒」だということだ。2021/06/18