内容説明
色覚障害者のサイト〈ランボー・クラブ〉。仲間を探す不登校の中学生・菊巳が偶然見つけた、そのサイトのトップに掲げられたアルチュール・ランボーの詩。フランス語など習ったこともないのに、なぜ僕はこの原語の詩を読めるのだろう? 「Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oは青……」。その時、僕にあるはずのない、鮮やかな血の色を見た記憶が蘇った。そして後日、何者かによってサイトの詩が書き換えられ、詩になぞらえた死体が発見された! 色覚障害の少年をめぐる事件の、驚くべき真相とは? 鮎川哲也賞受賞作家が贈る、傑作本格ミステリ。/解説=大矢博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
31
自分と同じ後天性色覚障害の仲間を探す中学生の少年・菊巳の記憶と遺伝子を巡るミステリー作品。これはすごいですね。蘇っていく菊巳の記憶、ランボーの詩に見立てた連続殺人、入れ替わった戸籍と謎が謎を呼ぶ展開の連続に、最後までどうなるのか全く予想出来ず、目を離すことが出来ませんでした。謎の使い方もですが、密室殺人の使い方も上手いですね。残念なのは伏線回収でしょうか。畳み掛けるかのように回収するのは良いんだけど、そのせいで謎の旨みを十分に引き出せていなかったように思います。魅力のある作品ではあるのでオススメ。2015/11/02
きょん
18
ミステリ部分よりも、十代の不安定な追い詰められていく心理がスリリングだった。しかし、彼の様な成功例はあんなマッドサイエンティストより、まともな研究者に公開してゆだねた方が人生安寧が得られそう。そして、母が子供が大人になりつつある事を自覚して彼の担う重荷を打ち明けられていたら避けられた事だったんですよね。本物の菊巳くんが気の毒に思えて仕方ない。2016/02/27
まある
11
久しぶりの岸田るり子さん。色覚障害のある不登校の美少年が事件に巻き込まれるのを、失踪した妻子の行方を探す夫に依頼を受けた探偵が解決する。伏線の回収も見事だし、障害を負い、母親との関係の不良から家庭での疎外感を覚える揺れる少年の心理描写も良かった。衝撃のラストとか意外な犯人といった作品ではなく、沢山ある手掛かりのピースをひとつひとつ嵌めると真実が見えてくる。それにしても、菊巳の母親がもっと息子に向き合い、会話を持っていたらと思ったりする。そうでないから物語が成立するわけだけれど。2015/12/11
はとむぎ
11
共感覚の話かと思ったら、そうでもなかった。けれど、どこかファンタジー要素の残る抽象的な表現のおかげで、話がどう進むのか楽しみなままで読むことができた。最終的に、この中で面白かったのは、主人公の心の変遷と、それによって生まれるトリックの混線だったように思う。思い込みで、人の行動がこんなにも違って見えるのだなと改めて恐ろしく感じた。2015/12/10
sui
11
25。初めての作家さんでしたが冒頭から作品への引き込まれ感が半端なくて、久々に夢中になって読みました。色覚障害者である自分にはあるはずのない赤い血の色の記憶、母親の赤い唇、菊巳と呼ばれていたのは本当に自分か…。自分は一体何者で、この記憶のズレはどこからくるのか。ページをめくるたびに次々と出てくる事件や謎で二転三転する展開は、(解説にもありますが)詰め込みすぎではなく、多すぎるヒントが更にこちらを翻弄してくる。最後まで飽きることなくドキドキしながら楽しみました。すごく面白かったです!2015/11/06