内容説明
人間の裡に潜む不気味なものを抉り出し、独特の乾いた筆致で書き続けたシャーリイ・ジャクスンは、強烈な悪意がもたらす恐怖から奇妙なユーモアまで幅広い味わいの短編を手がけたことでも知られている。死後に発見された未出版作品と単行本未収録作を集成した作品集Just an Ordinary Dayより、現実と妄想のはざまで何ものかに追われ続ける女の不安と焦燥を描く「逢瀬」、魔術を扱った中世風暗黒ゴシック譚「城の主」、両親を失なった少女の奇妙な振るまいに困惑する主婦が語る「『はい』と一言」など、悪意と妄念、恐怖と哄笑が彩る23編にエッセイ5編を付す。本邦初訳作多数。/収録作=「序文 思い出せること」「スミス夫人の蜜月(バージョン1)」「スミス夫人の蜜月(バージョン2)――新妻殺害のミステリー」「よき妻」「ネズミ」「逢瀬」「お決まりの話題」「なんでもない日にピーナツを持って」「悪の可能性」「行方不明の少女」「偉大な声も静まりぬ」「夏の日の午後」「おつらいときには」「アンダースン夫人」「城の主」「店からのサービス」「貧しいおばあさん」「メルヴィル夫人の買い物」「レディとの旅」「『はい』と一言」「家」「喫煙室」「インディアンはテントで暮らす」「うちのおばあちゃんと猫たち」「男の子たちのパーティ」「不良少年」「車のせいかも」「S・B・フェアチャイルドの思い出」「カブスカウトのデンで一人きり」「エピローグ 名声」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
112
前半はモヤっとするイヤミスというか、イヤ文学。後半はユーモア系。実生活を題材にしたラストの6編が面白かった。「s.b.フェアチャイルドの思い出」と「メルヴィル夫人の買い物」は繋がっているようだ。悪魔を陥れる話も好き。英米では匿名の手紙というのは一種の文化なのかな。クリスティにもあったしね。2016/05/17
sin
93
なんでもない一日と言いながら作者は、人の…いや自分自身に隠された悪意を描き出して見せているのだろうか?そうした毒を含んだ作品も興味深いが、この短編集の特色はなんといっても作者自身の生活を描いたエッセイが納められていることだろう。若い頃に将来作家になると決めて挑んだミステリーで犯人をくじできめようとしたり、母として長男とその友達に抱く思いとか、ごく身近に感じられるような作者の人となりが伝わってくる。2016/05/30
nuit@積読消化中
82
シャーリー・ジャクソンの短編は「くじ」以外おそらく読んでなかったので、長編とも違う、人間の(良い意味で)イヤ〜な部分をこれでもかと堪能させていただきました。当面、イヤミス系はお腹いっぱいです(苦笑)。しかし、数日するとこの手のお話はまた読みたくなるから不思議である。2016/02/20
Panzer Leader
72
「くじ」の時と同じく、ちょっと疑問を持つくらいオチのない(あっても自分が気付かないだけか)話が多いなあと思いながらも、自分がその味わいに慣れてきたのかそれとも作者が作風を変えてきたのか、後半に入るととても読みやすくなる。決して後味が良いとはいえないが、心に底に残るドンヨリ感よりもむしろカラッとした読後感。2018/04/27
mii22.
63
23の短編とエッセイ5編。日にちをかけて少しずつ楽しんだ。ぞっとしたり、可笑しかったり、いろいろなタイプのお話しが詰まっているが、読後はどれも「えっ」と立ち止まり戸惑いを感じる。人間の裡にある悪意や狂気など闇の部分をチラチラと見せつけられ、ざわざわと不安な気持ちにさせられる。一番のお気に入りは、姿の見えない何者かに追われる不安な気持ちを、妄想と現実の境界が曖昧な幻想的雰囲気に描いた「逢瀬」。どこか青ひげを思い出させる「スミス夫人の蜜月」も好き。エッセイは母親あるある的内容で面白かった。2016/03/24
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