内容説明
17世紀半ばから1世紀余にわたり繁栄を見せた欧州カフェ文化の先駆、コーヒー・ハウス。そこは政治議論や経済活動の拠点であると同時に、文学者たちが集い、ジャーナリズムを育んだ場として英国に多大な影響を与えた、社会の情報基地でもあった。近代都市・ロンドンを舞台にした、胡乱(うろん)で活力にみちた人間模様と、市民の日常生活を活写する。(講談社学術文庫)
目次
学術文庫版まえがき
第一章 十八世紀イギリスの生活史──ロンドン、ペスト、大火
第二章 ジャーナリズムの誕生──クラブ、政党、雑誌
第三章 ウィットたちの世界──文学サークル、科学実験、チャップ・ブック
参考文献
原本あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなほりふくろう
25
川北稔さんのイギリス近代史に触れるうち、トピックとしてのコーヒー・ハウスを通して当時の空気が味わえるかと思って手に取った。結果、期待した通りで非常に満足。王立協会、ロイズ、文芸活動、政治議論、ジャーナリズム、そして様々な情報と流言が飛び交う活気にあふれなお猥雑な空気……当時の文化やイデオロギーを醸成する場がコーヒーハウスだったのだ。2014/09/01
焦げタコ
24
色んな立場の人間が入り混じってた頃の辺りの描写好きだな。説明解説を書きながら要所に、当時の状況が頭に浮かぶような会話だったり情景描写を混ぜ込んでて読みやすかった。2023/09/29
パトラッシュ
20
17世紀半ば以降、ロンドンに増え続けたコーヒーを飲ませる店が英国史に大きな影響を与えていくドラマが実に面白い。ジャーナリズムやロイズ保険誕生の母体となり、ポープやジョンソンなど著名作家が集まって文化発展の拠点になっていく。歴史や文学で知っていた名前が登場してはコーヒー・ハウスをハブに結びつき「あの話にはこんな事情があったのか」と思い当たるのもしばしばだ。やがてアフタヌーンティーや会員制クラブに変質しハウスは衰退してしまうが、お上品ぶった紳士淑女などつまらない。英国が最も魅力的だった時代をたっぷり味わえる。2020/04/30
Hepatica nobilis
15
17世紀から188世紀にかけてイギリスに流行したコーヒー・ハウスの歴史。初期はアルコールを出さずあらゆる階級の人間のたまり場であったが、次第に政治的な党派性を帯びていったり、文人の集まる文芸サロンになっていったり、図書室のようになったり様々な時代に趨勢で形態を変えてきた。興味深いテーマだが、そもそもイギリス史と文学史にはある程度精通していた方が楽しめただろうと思った。2018/12/24
吟遊
15
博識で面白い。副題にあるとおり、18世紀のイギリス生活史(ロンドンメイン)でもあり、それがコーヒーハウスとの接点をもって語られる。政治の議論、陰謀、海上保険、海外郵便、文学、新聞・雑誌、そして、新刊や古本の販売まで!コーヒー・ハウスを舞台にくり広げられる。珈琲好きに勧めたい!2017/04/10