内容説明
王政復古直前に来日したデンマーク人が、フランス公使ロッシュの近辺で見聞した貴重な体験を綴る。将軍慶喜との謁見の模様やその舞台裏、横浜の大火、テロに対する緊迫した町の様子、また、日本人のきれい好きから悪習や弱点までも指摘。旺盛な好奇心、清新な感性、鋭い観察眼と洞察力。若き海軍士官が幕末日本の姿を鋭く鮮やかに描く。(講談社学術文庫)
目次
学術文庫版へのまえがき
第一部
一 日本へ
二 横浜I
三 横浜II〔本町〕
四 横浜III〔岩亀楼〕
五 横浜IV〔横浜から下関へ〕
六 横浜V〔日本人とその社会〕
七 横浜VI〔朝鮮よりふたたび横浜へ〕
第二部
一 兵庫への旅
二 大坂訪問 日本の宗教
三 大坂滞在 大君謁見、日本の演劇
四 大君の宮廷
帰国後のスエンソン
原本訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
48
著者はデンマーク人のフランス海軍士官。20代の延べ1年を幕末の日本で過ごした。感性が瑞々しくて率直。偏見や暴力への感覚は「時代人として良識あるレベル」と思う。フランス公使ロッシュの異才ぶり、慶喜謁見の舞台裏、大阪のわい雑さと商魂、幕僚の性格描写が面白い。日本人評は、男の容姿は酷く、女は美しいが地位がとても低い。清潔で善良で機敏。慇懃さと激情を併せ持つ点、芝居見物への解釈など、観察が鋭い。中でも、宗教への態度が欧州人とは違うと指摘するところ。価値のモノサシが宗教ではなく空気だからですよ、と言ってあげたい。2023/05/18
sibasiba
9
デンマーク軍人で修行がてらフランス海軍に出向して日本にやってきたスエンソンによる幕末日本見聞録。2013/12/17
Ryoichi Ito
7
王政復古直前の1966-1967年の約一年間,フランス海軍の士官として来日した弱冠24歳のデンマーク人が日本の社会と文化を観察した貴重な記録だ。ロッシュ公使の付添武官として徳川慶喜に謁見もしている。スエンソンはその後デンマークの電信会社・大北電信会社に要員としてスカウトされ,やがて社長となり,日本の国際電信技術政策に陰に陽に関与し続けた。フランスとデンマークが日本の近代化に果たした役割の一部を知ることができた。2023/06/28
takam
5
著者はデンマーク人のフランス軍人で幕末の徳川慶喜が将軍だった時に来日した人物。当時の日本の文化及び風俗に言及している。欧米視点が強いため、ところどころ日本が未開人と思われている言葉があるが、基本的に素朴さがあるなど好意的である。また、女性についての描写も的確であり、結婚前後で女性の地位が変わることなど、当時の日本人が当然と思っていたことについても触れている。当時からどことなく日本人は人見知りで宗教心がなく、どこか素朴な民族だと感じる。2018/12/12
osakanazuki44
3
デンマーク人の海軍士官。24,5才時、日本に滞在。佐幕のフランス公使側から見た滞在記。後々、電気通信会社の社長になる人物。日本女性は、容姿は良いが身持ちが悪い。男性は、刺青だらけ。正直で真面目だが中国人と比較して、機転が利かない。 芸妓は、欧州では軽蔑の対象だが日本では家族想いと見られる考えがある。2023/09/21